ロシアの最大手銀行スベルバンク(ロシア連邦貯蓄銀行)のコーポレート&インベストメント・バンキング(CIB)を担う子会社、スベルバンクCIBは、ロシアで初めて、ブロックチェーンを使ったコマーシャルボンドの取引を行った。スベルバンクが16日に発表した。ロシアの大手通信会社であるMTSとNSD(ロシアの証券保管振替機関)と連携して実施した。

 スベルバンクCIBは、スマートコントラクトを用いて価格が7500億ルーブル(1兆3400億円)で満期6か月のMTS社債の発行を企画した。取引は、NSDにより提供されたハイパーレッジャー・ファブリック1.1に基づくブロックチェーンプラットフォーム上で行われた。

 コマーシャルボンドは、企業により発行される無担保の確定利付証券(債券)であり、縁故募集により店頭取引(OTC)市場にて取引される。報告によると、取引を行うため、社債と資金の受け渡しを同時に行う完全なDVP決済(証券と資金の同時決済)モデルがブロックチェーン技術を用いて実装された。

 当事者である3社すべてが取引を行うブロックチェーンプラットフォームへのアクセスを取得することで、取引を扱う際の透明性と機密性を確保し、ロシアの法律により規定されている条件を満たした。取引の各参加者はオンラインで文書をやりとりし、リアルタイムで取引状況を追跡することができた。スベルバンクの上級副社長でありスベルバンクCIB代表であるイーゴリ・ブランツェフ氏は、以下のように述べた。

「今回のMTS社債の発行で、ブロックチェーンプラットフォームの信頼性、効率性、および安全な性質を確認し、債券が関与する複雑な仕組みの取引を行うことができただけでなく、この技術が持つロシアのデジタルエコノミーを発展させる可能性も示すことができた」

 NSDのエディ・アスタニン会長は以下のように述べた。

「NSDは、ロシアで最も早期にブロックチェーンを採用した企業の一つだ。当社は、17年の第1四半期に債券取引を行うためのプロトタイププラットフォームの開発に取り組み始めた。スベルバンクとMTSとの取引は、今までに類を見ない試みであり、ブロックチェーンが証券を扱う際に機密性とスピードを提供する大規模な使用に向いた技術であることを示している」

 さらにアスタニン会長は、NSDの最終目標が、市場リーダーとの連携でデジタル資産を記録するインフラを開発することだと付け加えた。12月、ロシアは初めて政府レベルでブロックチェーン技術の導入を行った。スベルバンクはロシア連邦反独占局(FAS)と協力し、ブロックチェーン技術を用いた文書の転送と保管を実施すると発表した。

 今月16日、ロシア国家院の立法委員会が、今年3月に最初にまとめられた「デジタル金融資産関連」法案を支持する立場を示した。立法委員会の委員長を務めるパヴェル・クラシェニンニコフ氏によると、「犯罪で得た収入の合法化、詐欺破産、またはテロ集団の援助を目的として、デジタル通貨を用いて規制されていないデジタル環境に資産を送るという不正行為が発生する既存のリスクを最小限に抑える」ことがこの法案の狙いだという。