インドの中央銀行であるインド準備銀行(RBI)は最新の金融安定報告書で、ステーブルコインが新興市場や発展途上国経済に多大な潜在的な危険をもたらすと主張した。報告書は、ステーブルコインがもたらす6つの脅威を挙げている。
RBIは仮想通貨に対して一貫して批判的であるが、特に「新興市場および発展途上経済(EMDE)の視点から」ステーブルコインについて問題を明確に指摘している。
「仮想通貨エコシステムにおける認証されていないデータと固有のデータギャップが、金融安定リスクの適切な評価を妨げている」。
ステーブルコインの原資産が一般的に自由に交換可能な外国通貨であるため、ステーブルコインが代替通貨となってEMDEを脅かす可能性があると報告書は主張する。大規模なステーブルコインの採用が結果的に経済の「クリプト化」をもたらし、「銀行、企業、家庭のバランスシートにおける通貨の不一致」を引き起こす可能性があるという。
またステーブルコインの存在により、EMDEの中央銀行が国内の金利や流動性状況を設定する上で問題を抱える可能性があるとRBIは続けている。さらに「暗号資産の分散性、クロスボーダーであり、匿名的な性質は、それらを資本フロー管理政策を回避するための魅力的な手段にする可能性がある」と指摘する。
ステーブルコインが国内の金融システムに代わる選択肢を提供することで、銀行の資金調達能力や信用リスク評価を損なう可能性もあるとしている。最後に、ピアツーピアの取引は追跡が難しく、その使用による不正行為の可能性を高めると報告書は述べている。
RBIはこの機会に、グローバルな協力の必要性の呼びかけている。RBIは「新興市場と途上国経済に対するリスクを分析するためのグローバルに調整されたアプローチが必要だ」と述べ、「この文脈で、インドのG20議長国としての優先事項の一つは、裏付けのない暗号資産、ステーブルコイン、DeFiのグローバル規制の枠組みを作ることだ」と語った。
RBIは中央銀行デジタル通貨(CBDC)に対してはより前向きである。昨年11月にはホールセール型デジタルルピーのパイロットプロジェクトを、今年2月にはリテール型デジタルルピーのパイロットプロジェクトを開始した。また、今年3月にはアラブ首長国連邦(UAE)の中央銀行とCBDCブリッジを研究するための協定を締結した。
翻訳・編集 コインテレグラフジャパン