カナダとスペインに拠点を持つ量子コンピューター企業であるマルチバース・コンピューティングは14日、カナダ銀行と提携し、仮想通貨を決済手段とするシミュレーションを実施した

マルチバース・コンピューティングは、カナダ銀行との概念実証プロジェクトの一環として同社の機器を使用し、非金融機関の決済手段として仮想通貨を導入するシミュレーションを行った。

同社によると、企業がさまざまな形態の決済を採用する可能性を理解するためには、「決済ネットワークで起こりうる相互作用について深く理解することが重要」だったという。シミュレーションの結果、仮想通貨決済は、特定の業界において、銀行送金や「現金に似た手段」と並んで存在することになり、それぞれの市場シェアは、経済コストや金融機関が採用拡大にどう対応するかに左右される可能性があることが示唆された。

カナダ銀行のデータサイエンス担当ディレクターであるマリアム・ハギギ氏は、「私たちは、古典的な計算技術では解決が困難な研究事例について、量子コンピューティングの力を試したいと考えていた」と述べた。「この共同けんきゅうは、量子ハードウェア上で複雑なシミュレーションを行うことで、量子コンピューティングが経済問題に新たな知見をもたらすことに役立った」という。

量子コンピューターの進歩に伴い、この技術を使えば、基礎となる暗号を解読してビットコイン(BTC)や他のブロックチェーンのセキュリティを「破壊」できるのではないかと指摘する声がしばしば聞かれるようになった。2月には銀行大手のJPモルガン・チェースが、量子コンピューティング攻撃に耐性のあるブロックチェーン・ネットワークに関する研究を発表している。しかし、MITテクノロジーレビューの専門家は3月、この技術がこうした用途に使われるのは何年も先のことだと論じている。