米議会上院は4月9日、トランプ大統領が指名したポール・アトキンス氏の米証券取引委員会(SEC)委員長就任を賛成51、反対45の僅差で承認した。
アトキンス氏は2024年末にトランプ大統領によってSEC委員長に指名されていた。アトキンス氏は、かつてウォール街のコンサルタントとして活動し、仮想通貨にも積極的な立場を取ってきた。2002年から2008年にはSECの委員を務めていた。
SECの現職委員たちは同日付の声明で「当委員会での豊富な経験を持つ人物として、アトキンス氏とともに、職員一同が投資家の利益のために職務を全うしていくことを期待している」とコメントした。
アトキンス氏は2009年に金融コンサルティング会社パトマック・グローバル・パートナーズを創業しコンプライアンスとリスク管理を専門としてきた。また、2017年から2024年末にかけて、仮想通貨業界のロビー団体「トークン・アライアンス」の共同代表も務めていた。
今後は、1月20日以降SECの委員長代行を務めていたマーク・ウエダ氏の後任として正式に就任する。前任のゲイリー・ゲンスラー氏は仮想通貨業界に対して複数の訴訟や調査を進めていたが、今年初めに退任している。
仮想通貨に寛容な規制方針へ転換
上院銀行委員会のティム・スコット委員長はアトキンス氏の指名について、「トランプ政権下でSECが進めてきた親仮想通貨路線が引き続き継続されるだろう」との期待を表明した。
「アトキンス氏は、デジタル資産に対する規制の明確化を進め、米国のイノベーションを後押しし、世界的な競争力を維持することにもつながるだろう」
トランプ政権下では、SEC内に仮想通貨タスクフォースが設立され、業界との対話を強化する姿勢が取られており、ゲンスラー前委員長時代に進められた複数の調査や執行措置も取り下げられている。
3月に行われた上院公聴会では、アトキンス氏自身も「SECの優先課題は、合理的で一貫性のある原則的なアプローチに基づいた、デジタル資産の明確な規制基盤の構築である」と述べていた。
一部報道によると、アトキンス氏の上院承認は資産開示の遅延により遅れが生じたという。これは、彼が億万長者一族と結婚していることが影響している。
1990年に結婚した妻サラ・ハンフリーズ・アトキンス氏の家族は、住宅用屋根材メーカー「TAMKOビルディング・プロダクツ」に関係しており、同社の2023年売上高は12億ドル超にのぼるとフォーブスは報じている。夫妻の純資産総額は3億2700万ドル以上と見られている。
また、フォーチュンによれば、アトキンス氏は仮想通貨関連の投資先として最大600万ドル相当を保有しており、そこには仮想通貨カストディ業者アンカレッジ・デジタルやトークン化プラットフォームのセキュリタイズなども含まれていたという。