米国上院銀行委員会の議員らは、証券取引委員会(SEC)の次期委員候補であるポール・アトキンス氏に対し、暗号資産業界との関係や、承認された場合にどのようにデジタル資産を規制するかについて質問した。

3月27日に行われた指名公聴会で、同委員会の筆頭民主党員であるマサチューセッツ州選出のエリザベス・ウォーレン上院議員は、アトキンス氏が2002年から2008年までSECの委員を務めていたことに言及し、「2008年の金融危機前に極めて不適切な判断を下していた」と批判した。ウォーレン氏はまた、アトキンス氏が設立したコンサルティング会社パトマック・グローバル・パートナーズの買い手を開示するよう求めた。同社は2022年に破綻した暗号資産取引所FTXに助言を提供していた。

ウォーレン氏は「あなたのクライアントは、SECのような規制当局への影響の与え方について、1時間あたり1,200ドル以上も支払ってきた。もしあなたが承認されれば、そうしたクライアントに対して絶好の立場から働きかけることになる」と述べ、アトキンス氏の判断は「データに基づいた客観的なものとは限らない」と示唆した。

Paul Atkins addressing lawmakers at March 27 nomination hearing. Source: US Senate Banking Committee

ウォーレン氏は3月23日、ドナルド・トランプ大統領がSEC委員長に指名したアトキンス氏に対して書簡を送付し、同氏のパトマック社を通じた暗号資産業界との関係に基づいて、公聴会で説明責任を果たすよう求めていた。3月27日の公聴会では、パトマック社を売却予定とするアトキンス氏に対し、買収先が「将来のSEC委員長へのアクセスを買おうとしている可能性がある」として、買い手の開示を求めた。

これに対してアトキンス氏は「必要なプロセスに従う」と述べたものの、ウォーレン氏の質問には正面から答えなかった。ウォーレン氏は、パトマック社の売却が「事前の賄賂」となり得ると指摘した。

ウォーレン氏がデジタル資産に関する利益相反の懸念を強調した一方で、共和党の議員らは異なる立場を示した。委員長のティム・スコット上院議員は、ゲンスラー前委員長のもとでのSECの方向性を批判し、アトキンス氏が「デジタル資産に対する長らく待たれていた明確な方針を提供してくれる」と評価した。

アトキンス氏は、公聴会に先立って公開した声明の中で、「私の委員長としての最優先事項は、他の委員や議会と協力して、デジタル資産に対する合理的で一貫性のある、原則に基づいた規制の枠組みを提供することだ」と述べた。

トランプ氏が2023年12月にアトキンス氏をゲンスラー前委員長の後任として指名して以降、暗号資産業界の多くの経営者が支持を表明している。3月27日時点で上院銀行委員会はアトキンス氏の指名について採決を行っていないが、トランプ氏が政権に復帰して以降、SECは暗号資産企業に対してより友好的な姿勢を見せている。マーク・ウエダ委員が暫定委員長に就任して以降、コインベースやリップルといった主要企業に対する調査や執行措置の一部が取り下げられている。

これらの企業は、2024年の選挙サイクルにおいて暗号資産関連候補を支援する政治資金団体(PAC)に資金提供している。アトキンス氏は、セキュリタイズ、ポントロ、パトマックへの出資を通じて数百万ドル規模の資産を保有していることも開示している。