イーサリアムは、昨年末に「マージ」を成功させ、来月に上海アップグレードを迎える。今はイーサリアムの未来について話す良いタイミングかもしれない。イーサリアムのプロトコルは、今後どのように拡大できるだろうか?仮想通貨の既存プレイヤー以外で普及させるには何が必要なのだろうか?
世界で2番目に大きい仮想通貨であるイーサリアムは、アプリ利用者や開発者が殺到したことから 、取引スピードが遅くなり取引コストが高くなる問題に直面してきた。この問題は、「ブロックチェーンのトリレンマ」として知られており、分散化、セキュリティ、そしてスケーラビリティの3つを全て同時に成立させることは難しいことはよく知られている。数百万の取引を処理しつつ堅固なセキュリティ水準を維持し分散化を進めることは至難の業だ。
シャーディング
解決策として、ブロックサイズを大きくすることやサイドチェーンを使うことなどが提案された。しかし、完璧な解決策を見つけるのは難しく、何かと中央集権化やセキュリティリスクが問題としてつきまとった。
「シャーディング」はどうだろうか?ネットワークを「シャード」と呼ばれる複数の小さなサブ・ネットワークに分割し、それぞれが並行して取引処理を行うことで、一つあたりのネットワークが処理する取引数を減らす仕組みだ。合理的な気がするが、いかがだろうか?
物事はそう上手くいかない。シャーディングにも欠点はある。ネットワーク全体での合意形成(コンセンサス)を定義することが難しくなったり、シャード間でのコミュニケーションが課題として生まれたり、ハッキングの可能性を高めたりすることが問題点として指摘される。
ロールアップ
ロールアップはどうだろうか?複数の取引を一つにまとめて、イーサリアムのセキュリティを守りつつオフチェーンでの取引執行を可能にするのがロールアップだ。主なロールアップはOptimistic RollupsとZK -Rollupsだ。
イーサリアムの未来の鍵を握るのはロールアップだろう。トラストレス(誰かを信頼しなくて良い)でパーミッションレス(誰でも参加できる)で大規模レベルで安全に取引の処理ができる。ブロックチェーントリレンマへの解決策として期待できるだろう。最近のイーサリアムも、プロトコルレベルでロールアップをサポートする方向で動き出している。ロールアップへの期待の大きさがうかがえる。
将来、イーサリアムを筆頭にしたブロックチェーンは、レイヤー1は決済(Settlement)、レイヤー2はアプリのための拡張性あるプロトコルという棲み分けをするかもしれない。これによってブロックチェーンの普及は進み、数十億人の人々が仮想通貨に触れる機会を生み出すかもしれない。
著者 Ledger
プロフィール:2014年に誕生した仮想通貨のハードウェアウォレットの会社。拠点はフランスにあり、現在はLedger Nano XとLedger Nano S+、Ledger Nano Sという3種類のハードウェアウォレットを製造・販売している。Ledger Nano S +は2022年4月4日発売の最新作。Ledger Nanoシリーズに接続して使うソフトウェアであるLedger Liveを、全ての仮想通貨サービスが1箇所に集まるプラットフォーム、いわば「Web3.0のハブ」にすることを目指している。公式サイト:https://www.ledger.com/ja