【バイナンス・ラボ独占取材】仮想通貨市場には「熱狂的信者」だけが残る 1000億円ファンドの投資戦略とは?

 出来高ベースで世界最大の仮想通貨取引所バイナンス傘下の仮想通貨・ブロックチェーン投資ファンドバイナンス・ラボ」のトップであるエラ・ジャン氏は先週末、カリフォルニア州からコインテレグラフ日本版のインタビューに答えて、ブロックチェーンの「熱狂的な信者」である我々は、仮想通貨の普及など長期的な価値創造に貢献できるプロジェクトに投資していくと述べた。最近の仮想通貨相場の低迷は気にしておらず、あくまで長期的な目線でブロックチェーンに貢献できるかどうかを見極める構えだ。

 10億ドル(約1100億円)を運用するバイナンス・ラボのトップを務めるジャン氏は、「最近の荒れた相場は気にならない」と発言。市場を去るのは「ブロックチェーンを信じていない人」だと指摘し、むしろ彼らが去った後は「ノイズ」が少なくなると相場の低迷を歓迎。

 「むしろ今は本当のダイヤモンドが割安で転がっているかもしれないから絶好の投資機会なのではないかと前向きに捉えた。

 「仮想通貨市場の時価総額は、今後数倍も十数倍も成長する。トレーディングは私にとってあまり興味のないことだ。大事なのは長期的な価値の創造だ」

 6月にもチャン氏は、イニシャル・コイン・オファリング(ICO)の「バブルがはじけることは、業界にとって良いこと」と発言していた

 バイナンス・ラボは「社会的なインパクト」を重視するファンド(Social Impact Fund)だ。投資先の選定において重要視するのは人々の生活における仮想通貨の普及に貢献できるかだ。

 ジャン氏は、アマゾンなどeコマースが我々の生活を変えた時と同じくらいの影響力があるプロジェクトを探しているという。ただ現在そういったプロジェクトは少なく、一時期話題になった(分散型アプリ(DApps)の先駆けである)クリプトキティーズでさえデイリー・アクティブ・ユーザー(DAU)が100人程度だと指摘した。

 こうした現状を打開するために現在バイナンス・ラボが投資している企業の一つは、分散型デジタル資産・金融サービスプラットフォームのリブラ・クレディット(Libra Credit)。バイナンス・ラボとリブラ・クレディットは先月末に新たな提携関係を発表。リブラ・クレディット上でバイナンスのトークンであるBNBを担保に出すことで、法定通貨と仮想通貨でローンを組めるサービスを立ち上げた。ジャン氏は、こうしたサービスによって「仮想通貨の利用に関して啓蒙できる」と期待する。

 この他バイナンス・ラボは、仮想通貨のスケーラビリティ(規模の拡大)問題、プライバシー問題に取り組むプロジェクトを中心に出資。プライバシー重視の仮想通貨「モーバイル・コイン(MobileCoin)」や個人投資家のためのブロックチェーン・プラットフォームである「リパブリック(Republic) 」、スマートコントラクトの監査を行う「サーティック(CertiK)」やプライバシー最優先のクラウドコンピューティング・プラットフォーム「オアシスラボ(Oasis Labs)」がポートフォリオに入っている。

 ちなみにバイナンスは7月末に分散型アプリを稼働させるブラウザ搭載のトラストウォレットを買収。本格的に分散型アプリの普及のために着々と布石を打っている。

 参考記事:「仮想通貨取引所バイナンスが初の買収 今後も買収を続ける方針」

 

伝統的なベンチャー・キャピタル(VC)との違い

 ジャン氏によると、伝統的なVCとブロックチェーン関連のVCの違いは、プロジェクトの進捗状況についてオープンかどうかだ。

 伝統的なVCが直面するのは、ウィナーテイクオール(勝者総取り方式)のビジネス環境。このため創業者には秘密裏にプロジェクトを進めてライバルを出し抜く力が求められる。

 一方ジャン氏によると、ブロックチェーン業界における理想的な創業者像は「協力的」な人だ。そもそもブロックチェーンは、オープンソースや透明性を重要視しており、創業者には多くの人を説得させるための強いリーダーシップやコミュニティー全体に貢献するという意識が求められるという。

「(イーサリアム共同創業者である)ヴィタリック(・ブテリン)がよい例だ。何事もオープンにシェアしてコミュニケーションを取っている」

 ブテリン氏は、ツイッターなどSNSでの情報発信を積極的に推進。最近では、プルーフ・オブ・ステーク(PoS)を使ったイーサリアムの新たな合意形成アルゴリズム「キャスパー」の説明のため75回のツイートからなる「ツイートの嵐」を実行して話題を呼んだ。

 またジャン氏は、ブロックチェーン・プロジェクトの創業者は辛抱強くなくてはならないと指摘。テストネットとメインネットの立ち上げを急がず一歩一歩コードを積み上げていく姿勢が大事で、「オペレーションのスピードは速いが、プロジェクト全体の進捗には時間をかける「速さと遅さ(Fast and Slow)」が共存した創業者は本物だという。

 実際、伝統的なVCでは投資した会社の株式売買ができないロックアップ期間はIPO(新規株式公開)後の6ヶ月ほどだが、バイナンス・ラボのロックアップ期間は3年程度になることも多く長期戦だという。IPOは、ビジネスがすでに成熟していることを前提に行われるが、ICOはほぼゼロからのスタート。事業計画を書いたホワイトペーパーを達成するには時間がかかる。

「我々が投資する理由は、資産を売却するためではない。ICOの後も10年経っても重要な資産クラスとして保持したいと考えている」

 ブロッックチェーン業界における理想的な共同創業者像ついては、イーサリアムとカルダノの共同創設者チャールズ・ホスキンソン氏も似たような見解を述べていた。今年6月のコインテレグラフ日本版とのインタビューの中でホスキンソン氏は、ブロックチェーン業界で求められる人材は「移り気が激しい大学中退者が多いシリコンバレー型」でなく、「進行スピードは遅いが一歩一歩課題をクリアしていく日本型」だと話していた

あわせて読みたい
「我々はバブルがはじけることを望む」バイナンスの幹部が発言
バイナンス、1000億円規模の仮想通貨ファンド設立を計画
シリコンバレーより日本でブロックチェーンが発達する理由とは? 仮想通貨カルダノ創設者が解説【動画あり】