オランダの経済・気候政策省が、テクノロジー全般にわたるブロックチェーンのさらなる発展について研究するチームを創設したことを先日報じた。これは、ブロックチェーン技術の導入と応用に向けた大きな一歩だ。政府は今やこの新たな技術に関し、仮想通貨としての側面に対する規制作業のみを行うのではなく、その技術的メリットを積極的に研究している。
ブロックチェーン技術は今、新たな導入の波の変わり目に来ている。導入は一斉に行われるのではなく、まずは仮想通貨から始まろうとしている。銀行は、ブロックチェーンが自分たちの進歩の助けとなることに注目し、ブロックチェーンや仮想通貨における「市場初」を狙って競っている。また、大手企業も独自のブロックチェーンプロダクトに関し同様の動きを見せており、アマゾン、マイクロソフト、IBM、オラクルなどが張り合っている。
オランダのブロックチェーン研究計画
オランダ政府がブロックチェーンへの取り組みを始め、その可能性について調査する動きは、オランダ・ブロックチェーン連盟のロブ・ファン・ヘイゼル代表が主導した。ヘイゼル氏が、オランダ政府の委託による国家研究計画を提起した。
この研究計画では、ブロックチェーンを全国で採用し、その潜在能力をもって国家の利益とすることができるか明らかにするため、3つの重要な分野に注目する。まず、管理者が存在しないというブロックチェーンの特質が信頼に値するかどうか、究明を目指す。信頼できる個人や組織を必要とする法制度や社会制度に対し、ブロックチェーン技術が本当にその代わりとなり得るのかを探る。
次に、政府は持続可能性について評価しようとしている。エネルギー消費コスト、拡張性、権力集中や乗っ取りに対する回復力が分析される予定だ。最後に、ブロックチェーンをどのように管理・統治するのか、その方法を見つけ出す必要がある。
ブロックチェーン技術は幅広い分野で応用できる可能性を持っているため、政府はこの技術を社会的ニーズのさまざまな局面で、合理化やコスト削減に利用することができるだろう。
しかし、現在ブロックチェーンの可能性を掘り下げて研究している全ての分野に言えることだが、可能と言われていることを実現するのに、この技術が実際に適切で十分成功の見込みがあるのか見極めるため、一定レベルの実験が必要である。要するに、もし政府がブロックチェーンをうまく使いこなす方法を見つけることができれば、この革新的な技術の採用をスピードアップさせる、大規模な分野となる可能性があるのだ。
銀行や企業の後を追う
政府のレベルでは、企業圧力や資本主義的競争が少ない一方で、国民から負託された責任の一部として、公的事業を効率的に行う義務があり、監視の目も集まる。そのような理由から、オランダ政府が優位性のある新たな技術として、特にブロックチェーンを研究しようとしているのも理解できる。
しかし、この技術の可能性を広げようという政府の意欲は、採用の新たな推進力と見なすことができるかもしれない。そのため政府は、ブロックチェーンプロダクトで市場初を目指し競争する銀行・企業に続く、第3の存在になっている。
民間分野に目を向けると、銀行は顧客に仮想通貨取引デスクを提供しようと躍起になっているだけではなく、銀行自身の業務プロセスに対し、ブロックチェーン技術が組織内部で実現できることにも注目している。強力なライバル同士の銀行、モルガン・スタンレーとゴールドマン・サックスは、ブロックチェーン技術を使った実用的なプロダクトを一番に市場へ出そうと、開発と実験に取り組んでいる。ジェイミー・ダイモン氏やその他の人たちがビットコインを詐欺と呼んだ時とは、ほど遠い状況だ。
伝統的な中央集権的大企業であるマイクロソフトやアマゾンなどの大手でさえ、分散化の世界に手を広げ、資本化や独占といった企業的使命に大きく逆らうプロダクトを提供しようとしている。ブロックチェーンが技術の次の波となり得るという証拠が、銀行分野や多くの企業で作り上げられつつあり、それら他の分野間での今後の競争に先手を打つことが重要だ。
政府の関心
政府が事業を行うための新たな方法に目を向け始めても、民間分野の組織と同じような企業間競争はないが、それら民間分野からの圧力と意欲には必ず気付くだろう。研究計画を持つオランダなどの政府は、透明性や効率性、及び高い費用対効果をもたらすブロックチェーンの可能性に対し、国家のリーダーでさえも注目していることを示している。
しかし、政府レベルでブロックチェーンの可能性を研究し始めたのは、オランダだけではない。未来へ目を向けることを政府に望むさまざまな国に、多くの推進力が存在する。例えば英国政府は、ブロックチェーンが可能とする、国境を超えた分散型システムの枠組みの設定について、国家が持つ役割に疑問を持つ国会議員たちから聞き取りを行った。さらに、この技術の仮想通貨の側面により注目すれば、英国は最適な規制手段を判断するため、仮想通貨タスクフォースも立ち上げている。
ビットコインに対し強硬姿勢で取り組む中国でさえ、ブロックチェーン技術が将来、重要な役割を果たす可能性に気付いている。中国政府は5月10日、19年末までにブロックチェーン業界の全国的な発展を促進するための、「ブロックチェーン基準」を公表した。
南アフリカは、アフリカ国家にブロックチェーン環境を育てるため、同国中央銀行を通して、特定の企業が緩和された規制の下で事業運営できる「サンドボックス」を設定した。政府はこの取り組みから何が生まれるか、見守っている。
もう一つの採用の道
わずか1年前には、ビットコインや仮想通貨、そしてブロックチェーン技術でさえ「殺鼠剤」や「幻覚剤」と小ばかにされていたことを考えれば、この数ヶ月で起こっている動きは、非常に大きな転換であると言える。
かつてビットコイン最大の敵とみなされていた銀行は、今では何十人ものブロックチェーン専門家を雇い入れている。これまで常に絶頂期にあった企業も、現在は分解と分散化に目を向けている。それが業界の次の波が向かう場所であることを、分かっているからだ。
今、この最新技術を最善を尽くして研究し、社会をより効率的で合理的で進化したものにするため利用しようとしているのは、ブロックチェーンの力を合法化しようとしている政府だ。