著者: アレックス・オドネル(コインテレグラフのシニアライター)

マイクロストラテジーの数十億ドル規模のビットコイン投資は大成功を収めた。しかし、好調は長続きしないだろう。安価な資金調達が枯渇すれば、マイクロストラテジーの株価は低迷する恐れがある。

戦略を模倣した企業も同様の運命をたどるリスクがある。ビットコイン(BTC)マキシマリストは他の選択肢を探るべきだ。

2020年以来、強気の投資家はマイクロストラテジーにBTCを蓄積させるための資金を事実上提供してきた。マイクロストラテジーは高く評価された株式を発行し、ほぼ無利子で借り入れることで、株主に魅力的な「ビットコイン利回り」を生み出している。

これにより、マイクロストラテジーの株価は上昇を続けた。製薬会社から動画共有サービスまで、マイクロストラテジーの戦略を模倣する企業が増加している。

企業のBTC保有はインフレヘッジとはなるが、高い株価プレミアムを正当化するものではない。マイクロストラテジーの株価を押し上げたサイクルは、いずれ逆転するだろう。2025年には、投資家はMSTRを避け、シンプルな現物BTCのエクスポージャーを選ぶだろう。

MicroStrategy’s performance vs. benchmarks. Source: MSTR Tracker

マイケル・セイラーのビジョン

もともとソフトウェア会社だったマイクロストラテジーは、2020年に創業者のマイケル・セイラー氏が会社のバランスシートを使ってBTCを購入し始めたことで、事実上のビットコインヘッジファンドとなった。

それ以来、マイクロストラテジーは約235億ドルをビットコイン購入に費やしてきた。MSTRトラッカーのデータによれば、現在40万BTC以上、ビットコインの総供給量の約2%を保有している。

セイラー氏の賭けは成功した。12月7日時点で、マイクロストラテジーの保有ビットコインは400億ドル以上の価値があり、約165億ドルの未実現利益を記録している。これは投資資本に対する70%以上のリターンだ。

マイクロストラテジーの株価はさらに良好だ。2020年以来、MSTRは約2500%上昇し、エヌビディアを除くほぼすべての大手上場企業を上回った。今年は特に好調であり、12月7日時点でMSTRは年初来で600%近く上昇し、BTCの125%の上昇を上回っている。

MSTRは1株400ドルで取引され、時価総額は900億ドルを超えている。これは、同社の保有BTCに対して2倍以上のプレミアムで取引されていることを意味する。

ベンチマークの株式アナリストであるマーク・パーマー氏は、マイクロストラテジーのソフトウェア事業が第3四半期に1850万ドルの損失を出したことを考慮に入れるべきではなく、むしろMSTRが資本市場から資金調達をし、ビットコインの保有を増やすことで創出してきた「株主価値」に注目すべきだと11月のリサーチノートで主張している。

Bitcoin per MSTR share. Source: MSTR Tracker

BTC戦略を加速化

投資家はまだ飽き足らない。8月以降、MSTRへのレバレッジエクスポージャーを謳う上場投資信託(ETF)は、運用資産を45億ドル以上を増やした。

11月29日、分散型金融(DeFi)プロトコルであるソルブは「オンチェーン・マイクロストラテジー」を立ち上げる計画を発表した

一方、他の企業もマイクロストラテジーに追随している。製薬会社ホス・セラピューティクス、人工知能(AI)開発企業ジーニアス・グループ、動画共有サービスであるランブルといった企業だ。イーロン・マスク氏のテスラはすでに約10億ドル相当のBTCを保有している。

ビットコイントレジャリーズによれば、企業は12月7日時点で520億ドル以上のBTCを保有している。

マイクロストラテジーはBTC戦略を加速させている。8月、マイクロストラテジーは独自のパフォーマンス指標である「ビットコイン利回り」(BTC保有量と発行済株式の比率)を採用すると発表した。1株あたりのビットコインを企業パフォーマンスの指針として設定している。

10月、マイクロストラテジーは「21/21プラン」と呼ばれる資金調達計画を発表した。これは3年間にわたって、210億ドル分の株式と210億ドル分の社債を発行して、資金調達するという計画だ。目標はシンプルだ。パーマー氏によれば、マイクロストラテジーは、次の3年間で「MSTRのBTC利回りを4%–6%から6%–10%に増やす」ことを目指している。

420億ドル相当のBTCを購入することは、セイラー氏にとって当たり前の決断だ。彼はBTCが2045年までに1300万ドルに達すると考えており、悲観的見通しでも300万ドルになると予想している。

しかし、マイクロストラテジーの「アプローチには多くの反対者がいる」とパーマー氏は指摘する。「なぜ誰もがビットコインを購入するのではなく、同社の株式を購入するのかと問う人々に対して、経営陣は2020年以降のMSTRの素晴らしいパフォーマンスを指摘して批判に応えている」とパーマー氏は語った。しかし、この数字は変わる可能性がある。

MSTR’s premium to net asset value. Source: MSTR Tracker

現金不足になれば...

11月、マイクロストラテジーは3億ドルを転換社債で調達し、BTC購入のための資金を調達した。これは21/21プランへの最初の大きなステップだった。取引条件は魅力的だった。年利0%で、マイクロストラテジーは事実上無利子で借り入れた。投資家は転換社債をMSTR株式に転換する可能性があるが、1株あたり672.40ドルの固定価格でのみだ。これは12月7日のMSTRの取引価格より約70%高い。

ただし、1つの条件がある。MSTRが2028年6月1日までにその価格に達しない場合、債権者は現金での返済を要求できる。ほかのマイクロストラテジーの社債も同様の条件を備えており、少なくとも20億ドルの債務を構成している。。

株価が行使価格に達しない場合、現金不足は避けられない。債権者が償還を求めた場合、マイクロストラテジーは再融資(おそらくより不利な条件で)、もしくはビットコインを売却することになるだろう。BTC売却となれば、仮想通貨市場に衝撃を与えるだろう。マイクロストラテジーは世界最大の企業BTC保有者だ。いずれにせよ、MSTRのBTC財務に対するプレミアムは一夜にして消える可能性がある。それはマイクロストラテジーの「ビットコイン利回り」ストーリーを葬り去ることになる。

MSTRは11月21日の約543ドルの高値から約25%下落した。もしマイクロストラテジーのプレミアムが完全に消えた場合、MSTRは1株170ドルを下回るだろう。それはBTCの価格が一定のままであると仮定している。市場の下落は株価をさらに低下させる恐れがある。

ほとんどの投資家にとって、現物BTCへの投資 —ブラックロックのiシェアーズ・ビットコイントラストETFのようなETFを含む— は十分なボラティリティを提供する。もしセイラー氏のような「トリプルマキシ」ビットコイン強気派なら、ぜひMSTRに大きく賭けるべきだ。しかし、より慎重な投資家は距離を置くべきだろう。

アレックス・オドネルはコインテレグラフのシニアライターだ。彼は以前、DeFi開発者のウマミラボを創設し、ロイターで7年間金融ジャーナリストとしてM&AやIPOを取材していた。

本記事の見識や解釈は著者によるものであり、コインテレグラフの見解を反映するものとは限りません。この記事には投資助言や推奨事項は含まれていません。すべての投資や取引にはリスクが伴い、読者は自身でリサーチを行って決定してください。

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