分散型金融(DeFi)ヤーン・ファイナンス(Yearn.finance)のトークンYFIの時価総額が10億ドル(約1060億円)を突破した。創設者アンドレ・クロンジェ氏が7月17日にヤーン・ファイナンスのコントロール権をYIFを通してユーザーに移動するとブログで発表して以降、1カ月半程で「ユニコーン」の仲間入りを果たしたことになる。

ユニコーンは、企業価値10億ドル以上の非上場企業で設立10年以内のベンチャー企業を指す。

ただ、適切な評価額なのかは疑問符が残る。

ブロックチェーンリサーチ企業メサーリのエリック・ターナー氏が、YFI所有者に「実際にYFIのことを理解しているか?」Twitterでアンケートを実施したところによると、「いいえ」と答えた人の割合が37.85%に上った。Twitter上での簡単なアンケータ調査ではあるが、ブームのDeFiトークンに乗っかっているだけの投資家も多そうだ。

YFIはなぜ人気?

そもそもYFIが人気である理由の1つに、「フェアな立ち上げ(Fair Launch)」があげられる。

立ち上げ当初すでに特定の投資家やベンチャーがトークンを大量に保有するDeFiプロジェクトがある中、YFIは全ての人に平等に保有の機会を設けていた。YFIは、流動性プールのカーブやバランサーに対してヤーン・ファイナンスを通して資産を貸すことで獲得できる。プロトコルに参加することで独自トークンをもらえる仕組みは、流動性マイニングと呼ばれている。

一方、メサーリによると、ヤーン・ファイナンスは手数料収入で70万ドル(約7400万円)以上の利益をあげている。YFIトークンを持つことでプロトコルの方針に対する投票権を持つユーザーは、当然70万ドル超の利益の使い道について影響力を行使できるというわけだ。

ただ、だからと言って勢いに身を任せることが得策とは限らない。

メサーリ創業者のライアン・セルキス氏は、仮想通貨の歴史を振り返るまでもなく「壊滅的なバグ」が発見される例はありえると指摘。「ロック資金が1カ月ちょっとで800万ドルから10億ドルに急増した後であり、投資家は慎重に進めるべきだ」と最新のニュースレターの中で注意を払った。

YFIは過大評価か?

分散型金融の投資家からのYFIへのセンチメントは依然として肯定的なように見える。IDEOVCのイアン・リー氏はYFIの長期的なポジティブ材料として、Yearn.financeの開発者であるアンドレ・クロンジェ氏のテンポの速い製品リリースを指摘した。

クロンジェ氏はこの1ヶ月でyinsure.financeをはじめとして、様々な製品を発表している。仮想通貨ファンド「パラダイム」の共同創業者であるフレッド・エルサム氏を含む、多くの投資家はDeFi保険が次の大きな市場に進化する可能性を強調している。

商品開発の速度やyinsure.financeを取り巻く活発なコミュニティが、YFIの上昇トレンドを煽っているようだ。リー氏は次のように指摘する。

「我々はさらに大きな何かを目撃している。アンドレ・クロンジェ氏のビルド&シップのスピードによって、自己改善かつ革新的な資産として、YFIは最も早く進化している」

長期的には一部のアナリストはYearn.financeの評価額が数十億ドルに達する可能性があると述べている。仮想通貨アナリストのタイラー・レイノルズ氏はキャッシュ・フロー分析に基づいた150億ドルの時価総額に到達すると予想している。

「50万ドルのYFI=150億ドルの時価総額だ。もしFCFの50倍で取引された場合、保有者に3億ドルを生み出す必要がある。すでに2000万ドルの利益を生み出しており、yUSD/yCRVの成長に合わせて上昇するだろう。」

しかし、YFIの長期トレンドにはいくつかのリスクがある。最も明白なリスクはYearn.financeのコアデベロッパーであるクロンジェへの依存度が高いことだ。一貫して新製品や新機能を開発者がリリースしなければならないという大きなプレッシャーがある。

他のDeFiトークンと同様に、利回りが低下するリスクもある。DeFi市場全体の利回りが低下すれば、YFIやyearn.financeの需要も低下するかもしれない。DeFi業界の利回りに対する最大の脅威は、イーサ(ETH)の価格だ。イーサが下落を続け、その結果としてガバナンストークンがスリップする場合、利回りは大幅に低下する可能性がある。