中国最大のメッセージングアプリであり、同国で最も人気のある決済サービスの1つであるWeChatが、中央銀行デジタル通貨(CBDC)であるデジタル人民元への対応を開始する。

現地報道によると、テンセントは2日、独自のモバイルウォレット「WeChat Pay」によるデジタル人民元決済の受け付けを開始すると発表した。中国は2014年からデジタル人民元の開発を進めており、まだ全国的には実施されていない。10億人以上のユーザーを抱えるWeChatで商品やサービスの支払いが始まれば、大きな追い風となる。

WeChatは膨大なユーザー数と幅広いサービスから「メガアプリ」の異名を持つ。ユーザーはWeChat Payを使って、チャットや請求書の支払い、食べ物や交通機関の注文ができる。WeChat Payの月間アクティブユーザー数は8億人以上だ。

コンサルティング会社Trivium ChinaのアナリストLinghao Bao氏はCNBCに対し、「中国の消費者はWeChat PayとAlipayに固定されており、新しいモバイル決済アプリに乗り換えるよう説得するのは現実的でない」と述べた。「そのため、中央銀行が独自に行うのとは対照的に、WeChat PayやAlipayと手を組むのは理にかなっている」と解説した。

これまで中国人民銀行(PBoC)は、いくつかの都市で商業および消費者環境における少量の通貨を含むデジタル人民元の限定的なテストを実施した。全国展開の予定はないものの、人民銀行はデジタル通貨の利用拡大に関心を持っていることがうかがえる。

中国は、CBDCの開発において他国を大きくリードしている。今週初め、人民銀行は、人民元のデジタルウォレットアプリの試験版を中国のiOSとAndroidのストアでリリースした。