「キラーアプリは日本から生まれると思う。我々はそんな未来に向けて、みんなが安心してアプリを使えるような環境を作りたい」
このように語ったのはスマートコントラクトのセキュリティー監査を手がけるクオントスタンプ(Quantstamp)のリチャード・マCEOだ。先月、コインテレグラフ日本版とのインタビューに答えて、クオントスタンプの事業内容のほか、分散型アプリの普及において日本がカギを握っている理由について話した。
クオントスタンプは、スマートコントラクトのセキュリティ監査企業。開発者はQSPトークンを使うことでクオントスタンプの自動テストを利用し、スマートコントラクトにバグがないか確かめることができる。スタートアップ養成所の名門Yコンビネーターに参加している他、サッカーの本田圭佑が手がける個人ファンドが出資していることでも知られている。
「我々は主に2種類のミスについてテストする。1つ目は、サイバー攻撃者がスマートコントラクト上のファンドを盗むケースだ。有名なのはThe DAO事件だ。2つ目は、スマートコントラクトが凍結もしくは破壊されてしまうケース。有名なのはパリティ・ウォレットのハッキングだ」
The DAO事件とは、2016年6月にイーサリアムを利用した非中央集権的投資ファンドプロジェクトThe DAOのスマートコントラクトコードの脆弱性が標的にされてイーサリアムが不正送金された事件で、被害額は約360万ETH(当時の価値で約65億円)に上った。一方、パリティ・ウォレットは、2017年11月にパリティ社が提供するイーサリアムのウォレットにバグがあり、同ウォレット内の通貨の取引が凍結された問題。51万3774.16ETHを保有する587個のウォレットにアクセスできなくなった。
ブロックチェーン業界に参入したばかりの開発者は似たようなミスをすることが多いそうだ。
「一般的なビジネスにとって大事なのは、速度と破壊力。一方、ブロックチェーンでは書かれたプログラムが永遠に残ってしまう。ブロックチェーン業界に参入したばかりの企業にとって、セキュリティに対する考え方を変えるのには時間がかかるだろう」
開発者には面白いアプリ開発に専念してもらいたいからこそ、クオントスタンプはセキュリティ強化に注力するという。
マ氏がブロックチェーンで展開するアプリである分散型アプリ(DApps)の普及に向けて鍵となると考えているのが日本だ。現在、ブロックチェーン特化のコワーキングスペースNeutrinoのメンバーにもなっている。
「多くの日本人がデジタル決済に慣れているし、ビデオゲームをするのがうまい。特にベストなビデオゲームは日本で生まれる」
マ氏は、キラーアプリもビデオゲームから生まれると予想。現在すでにあるビデオゲームでも「ゲーム内通貨」の機能が発達していて複雑な経済圏を築いおり、仮想通貨を使った面白いゲームを考えるのは非現実的な事ではないと主張する。
「ゲームの世界と現実世界が2つあって、それがリンクするイメージだ」
キラーアプリ開発におけるハードルは「ブロックチェーン技術ではなくてゲームを作る事」。だからこそ日本で最初にキラーアプリが生まれるとマ氏はみている。ブロックチェーン業界では最終プロダクトが十分意識されていないが、日本ではプロダクトへの関心が高いと感じているそうだ。
ブロックチェーンの力を示すきっかけにもなるキラーアプリ。それが生まれる可能性が高い日本にいる理由は明白だとマ氏は語る。
「我々はみんなが安全にアプリを使える環境を作る。キラーアプリが誕生するときにね」
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