本稿の意見は著者のものであり、必ずしもコインテレグラフの見解を表しているものではありません。あらゆる投資や取引にはリスクが伴います。決定を下す際にはご自身で調査をお願いいたします。
市場第2位の時価総額を誇る仮想通貨イーサリアム(ETH)は今月、米規制当局から精査されている。米証券取引委員会(SEC)と米商品先物取引委員会(CFEC)は、イーサリアムが2014年に行ったトークン先行販売について、近日中に調査する予定だ。ウォールストリートジャーナルによると、規制当局は1933年証券法に基づいてイーサリアムが有価証券に分類されるべきかどうか精査している。
主に問題となっているのは14年に行われたETHトークンの先行販売である。イーサリアム財団はイーサリアムの開発のために合計で3万1000BTCを調達した。これは当時1830万ドル(約19億9000万円)に相当した(記事発行時点ではおよそ3億ドル相当)。
規制当局は、投資家たちが将来の値上がりを期待してトークンを購入したであろうことから、先行販売自体が証券販売に分類されるのではないかと考えている。もし証券であると認められれば、イーサリアム財団はトークン販売を実施する前にETHを有価証券として登録しなければならなかったことになる。SECやCFTCの担当者たちは7日に会合を開き、適切な活動方針についての議論を行う予定だ。他にもイーサリアム財団のイーサリアムへの影響力について議論が行われる。
イーサの共同設立者、イーサは証券との見方に反論
5月初旬、イーサリアム財団の共同設立者であるジョセフ・ルービン氏は、ニューオーリンズで開かれたテックカンファレンスで、現状についての説明した。ルービン氏はイーサリアムが有価証券に分類される心配は全く無いと、自信を持って話した。
「米国や他の国の弁護士と長時間にわたり協議してきたが、有価証券であるかないかについてまったく心配していない。絶対に証券ではない。…多くの規制当局はイーサリアムが何であるかを理解している」
更に、ルービン氏はイーサリアムは有価証券の分類に全く該当しないことから、規制される必要はないと考えている。
ハウィー・テスト
1946年、米国最高裁判所はSECとWJハウィー社間の争いに判決を下した。インベストペディアで説明されているように、この判決は通称「ハウィー・テスト」の基盤となった。簡単に説明すると、ハウィー社は所有する柑橘園の一部を、柑橘園の経営で利益を得ようとする投資家たちに売却した。これは最終的には最高裁判所でマーフィー判事により設定された以下の定義により、有価証券契約と見なされた。
「投資契約とは、第三者の努力にのみ依拠した収益を期待して行われる共同事業への金銭の投資である」
噛み砕いて説明すると、ハウィー・テストは2者間で行われる取引の価値が、片方の事業に依拠する物であるかどうかを判断するために使用される。このテストは、仮想通貨や、特にイニシャル・コイン・オファリング(ICO)に関する様々な憶測を呼んできた。
有価証券への分類に対する反論
イーサリアムの場合、ルービン氏は2つの理由からイーサリアムは有価証券では無いと考えている。第1に、イーサリアムのブロックチェーンはマイナーが取引を検証し、新しいブロックを作成し、ETHトークンをアンロックする手続きが必要だ。ルービン氏は多くの当事者が価値の作成に関わっているという事実により、イーサリアムは有価証券としての分類から外れると考えている。
「我が国の既存の規制制度では、この国の有価証券法は有価証券に適用されると定められているはずだ。そしてハウィー・テストの基準に該当しないものは有価証券ではない。イーサリアムは共有される計算リソースにアクセスするための手段であり、どんなやり方であれETHが規制される必要性が私には見出だせない」
第2に、イーサリアム財団はイーサリアムの価値に影響を与えていないと考えているためだ。イーサリアム財団はCFTCの前議長であるゲーリー・ゲンスラー氏が先週行った、イーサリアムおよびリップルが未登録の有価証券と見なされるべきであるとする主張を否定した。イーサリアム財団のトップである宮口礼子氏はニューヨーク・タイムズに宛てた手紙で、財団がイーサリアムの価値に影響を与えているとするあらゆる噂を否定した。宮口氏は財団はETHの供給または発行について何の操作も行うことができず、財団自身が保有しているETHの金額は全体の供給量の1%であり、これは実のところネットワーク内の他のユーザーが所有している金額よりも少ないと語った。
法的側面におけるイーサリアム
もしSECがイーサリアムを有価証券とすることを選択した場合、財団は裁判を起こす可能性が高い。これは何年にもおよぶ法廷闘争となる可能性がある。コインテレグラフは米国の企業弁護士であるディーン・スタインベック氏に対し、イーサリアムに関して現在行われている議論において、法律上はどのような結果が考えられるか相談した。スタインベック氏の説明によると、SECはあらゆるICOを有価証券の募集であると考えており、これはすなわち仮想通貨がそのように分類されるリスクは常に存在していることを意味する。
「SECは現実的だが、個人的見解としては、いくつかの理由によりSECがイーサリアムを標的にするのは間違いだと考えている。第1に、イーサリアムは悪者ではない。SECが重点的に対処するべき詐欺師やペテン師はいくらでもいる。なのになぜ、SECは善人に対して時間とリソースを費やさなくてはならないのか?第2に、イーサリアムのプラットフォームが、そのトークンを活用するやり方には、ハウィー・テストの基準に該当しないかもしれないという雰囲気がある。私が考えるに、SECはこれほどの重大性を伴う強制措置を、失敗の可能性があるにも関わらず、この段階で行おうとすることはできない」
スタインベック氏の考えでは、決定的な判断や結果は当分の間起こらない。彼はまた、マイニングを取引やブロックチェーンの検証に使用するイーサリアムのプロトコルは、有価証券としてイーサリアムを分類することに対し、説得力のある反論になるとの考えに同意した。
「採掘されたトークンは、ICOで発行されたトークンと比較した場合、有価証券と見なされる可能性は少ない。実のところ、CFTCは採掘されたトークンは商品であり、商品として取り扱われるべきだとする立場を取るのではないかと私は考えている」
もしイーサが証券に分類されたらどうなるか
いくつかの起こりうる事態については考えておく必要がある。仮にイーサリアムが有価証券と見なされた場合、様々な事が起きる可能性がある。まず、米国の仮想通貨取引所は有価証券を取引していることになり、SECに登録する必要が出てくることから、イーサリアムの価格が打撃を受けることになるだろう。また、登録を行うために取引が中止されることになるだろう。第2に、スタインベック氏が指摘するように「証券法を守れないことで、罰金や有価証券の購入または販売により損害を受けたと主張する者たちからの民事訴訟といった、大いに面倒な問題に発展する可能性がある」。
ハーバード・ロー・スクールのフォーラムによれば、SECは規制に準じなかった者に対して罰金を支払わせる可能性がある。個人に対する罰金の範囲は7500ドルから16万ドル、企業または組織に対する罰金は8万ドル〜77万5000ドルにおよぶ。罰金はさらに、審査の対象となる者が原因で誤った判断を行ってしまったとされる投資家の人数により増加する。
未登録の有価証券を販売したことで有罪の判決を受けた人または事業は、服役しなければならない可能性があるが、ジェイソン・ソメンサット弁護士がクオーツに語った話によれば、その可能性はかなり低い。要するに、もしもイーサリアムがSECの法を侵害していると見なされた場合、財団や取引所、そしてイーサリアムのブロックチェーンに基づいて構築された他のICOは、少なくとも罰金を受ける可能性がある。
いずれにせよ、イーサリアムの件でSECまたはCFTCが結論を急ぐ可能性は低い。イーサリアムは3年以上にわたり順調に運営を続けており、その時価総額はこの仮想通貨の革命的なブロックチェーン技術としての価値を表している。