イランの中央銀行が、仮想通貨取引所ノビテックスからの約1億ドル相当の不正流出事件を受けて、国内の仮想通貨取引所に対して厳格な営業時間制限を課したと報じられている。

ブロックチェーン分析企業チェイナリシスが18日に投稿したブログ記事によると、イラン国内の取引所は現在、午前10時から午後8時までの間のみ営業を認められているという。

チェイナリシスの国家安全保障インテリジェンス部門責任者アンドリュー・フィアマン氏は、コインテレグラフの取材に対し、この規制はさらなる攻撃への対応を容易にする狙いがあると述べた。「深夜に事件が発生しないようにすれば、対応がはるかに楽になる」と説明している。

ノビテックスは18日にハッキング被害を受けたと公表している

フィアマン氏はまた、「イラン国民は仮想通貨を使って国境を越えた取引を行っており、政府はそうした資金の流れをより厳しく管理しようとしている可能性がある」と指摘。「地政学的な緊張が高まり、資本流出のリスクがある局面では、なおさらその傾向が強まる」とも語った。

イラン中銀は過去にも取引所に対して規制を行っており、昨年12月には自国通貨リアルの下落を防ぐため、すべての仮想通貨取引所の一時的な閉鎖を命じたことがある。

なお、イスラエルは6月13日にイラン国内に対する複数の空爆攻撃を実行しており、両国は報復の応酬を続けている。

ノビテックスから流出した仮想通貨は焼却か

現在の推定によれば、ノビテックスから流出した資産総額は少なくとも1億ドルに上り、ビットコイン(BTC)、イーサ(ETH)、ドージコイン(DOGE)、XRP、ソラナ(SOL)など多岐にわたる。

親イスラエル系のハッカー集団「ゴンジェシュケ・ダランデ(Gonjeshke Darande)」が今回の攻撃の犯行声明を出しており、ノビテックスの内部システムに侵入してホットウォレットから資産を引き出したと主張している

Source: Gonjeshke Darande

チェイナリシスによれば、攻撃者が使用したウォレットは秘密鍵を持たない使い捨てアドレスである可能性が高く、資産の回収は不可能と見られている。

フィアマン氏は「ハッキングは通常、金銭的利益を目的とするものだが、今回は体制から資金を奪うという政治的動機が前面に出ている点で異例だ」と述べた。

トークンの「焼却(バーン)」とは、回収不可能なアドレスに送金することで、仮想通貨を流通から完全に除外する処理だ。

ノビテックスは「状況は制御下にある」と強調

ノビテックスは18日、X上で声明を発表し、外部からのサーバー接続を遮断したことを明かしたうえで、「現在、状況は制御下にある」とユーザーに向けて発表した。

現時点ではユーザーによるアクセスは制限されているが、ノビテックス側は「準備資金により、被害額はすべて補償される」と説明している。

また、ノビテックスの技術チームはホットウォレットを空にして、すべての資産をオフラインのコールドウォレットに移動させる作業を進めているという。

「外部サーバーへのアクセスが遮断されている影響もあり、プラットフォームへのユーザーアクセス回復には通常よりも時間がかかる可能性がある」とチームは述べている。

イラン仮想通貨エコシステムの中核

チェイナリシスによれば、ノビテックスの累計入金額は110億ドルを超えており、これはイラン国内の他の上位10取引所の合計(約75億ドル)を大きく上回っている。

Source: Chainalysis

ノビテックスは、イランのユーザーが国際的な仮想通貨市場にアクセスするための主要な窓口となっており、同国のデジタル資産エコシステムの中核を担っている。

「ノビテックスは単なる国内取引所ではなく、厳しい制裁下にあるイランの仮想通貨エコノミーにおいて、グローバル市場へのアクセスを可能にする重要なハブである」とチェイナリシスは分析している。

さらに同取引所は、イエメンのフーシ派、アルカイダ系のプロパガンダチャンネル、そして制裁対象であるロシアの仮想通貨取引所(ガランテックスやビットパパ)など、欧米諸国がテロ組織と見なす複数の団体との関係も取り沙汰されている。

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