マルタで成長著しい仮想通貨・ブロックチェーン業界について、IMF(国際通貨基金)の代表団は、マネーロンダリング(資金洗浄)やテロ資金調達にマルタの金融システムが使用されるという「重大なリスク」を生み出しているという懸念示した。マルタ地元英語ニュースメディア、Time of Maltaが1月24日に報じた

同記事によると、IMFはマルタ訪問後に調査結果を発表。金融、遠隔ゲーム産業、投資による市民権獲得プログラムなどと並び、ブロックチェーンがアンチマネーロンダリング(AML)のコンプライアンス違反であるという懸念を示した。

仮想通貨やブロックチェーンに友好的な国として知られるマルタ。イノベーションを促進させ、ブロックチェーン、仮想通貨への友好的な規制環境を整えるべく、昨年7月に同国議会においてブロックチェーン技術の規制枠組みを確立する法案を可決している

また、マルタのジョセフ・マスカット首相は、仮想通貨のことを必然的な通貨の未来として積極的に支持しており、政治、市民、企業活動全域に渡るブロックチェーン技術の革新的なインパクトの可能性を強く主張している。

このように「ブロックチェーンアイランド」の呼び名を得るために努力してきたマルタの地方の監督機関に対してIMFは、仮想通貨関連企業のアンチマネーロンダリング(AML)対策を徹底するよう警告。IMFはマルタの金融情報分析機関(FIAU)が一連の健全な措置を講じたと認める一方で、それでもなお、監督と執行システムの抜け穴を塞ぐための強固かつ即時の行動を求めたという。

また、IMFは更にマルタ当局の限られた対応能力への懸念について、以下のように述べたと伝えられている。

監督下にある金融機関の数の増加、新しい金融商品の急速な発展、進化を続ける規制環境の変化、そして労働市場の縮小により、マルタ金融サービス局はかなりの負担を強いられている

さらに、ブロックチェーンと仮想通貨に関する発言は別に、IMFはマルタの不動産市場、労働力不足、そして歪のあるインフラストラクチャーに関する一連の問題を特定したと報告した。それにもかかわらず、マルタの成長見通しは依然として概ね好調であるという見通しを示した。

IMFの仮想通貨に対するスタンス

IMFは昨年10月、仮想通貨の急成長が国際金融システムに「新たな脆弱性」をもたらすとの見方を示した報告書「世界経済見通し」を公開している。仮想通貨市場に関する知識や経験不足が国際金融システムにとってのリスクとなるだけでなく、サイバー攻撃も仮想通貨市場の信頼性を揺るがす新たなリスクになりうると見ている。IMFは、「継続的に進化」する産業を理解することで、各地の政府当局が最善策を講じることができると考えている。

一方、IMFのラガルド専務理事は昨年11月、シンガポール・フィンテックフェスティバルにおいて、国際社会が中央銀行発行デジタル通貨(CBDC)の可能性を考慮する必要があるとの考えを示している
 

ブロックチェーン・アイランド(コインテレグラフ・ドキュメンタリー)

なお昨年12月に公開されたコインテレグラフオリジナルドキュメンタリー動画(本社制作、日本語字幕作成中)にはマルタの歴史、ブロックチェーンを推進する政府の取り組み、可能性を見出している起業家、そして懸念となっている金融リスクに関しての考察も描かれている。

マネーロンダリングとは、脱税、麻薬取引、犯罪の取引で得られた不正な資金の出所や、直接の受益者を分からなくするために、他人名義の口座を利用したり、架空の会社を立ち上げたり(ペーパーカンパニー)、もしくは株式に大口の投資を行うなどすること。日本語では資金洗浄と訳され、犯罪によって得られた汚れたお金をきれいにし利用できるようにする行為を指す。マネーロンダリングは不正行為であり、罪に問われることとなる。省略してマネロンとも言われる。

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