メタバースが急速にユーザーに提供されている。企業やブランドがデジタルリアリティに参入する中、最近の調査によると、こうした動きとともに消費者の関心が高まっているという。

その一方で、メタバース活動に参加するユーザーが増えるにつれ、デジタルリアリティにおける不正行為のリスクも増大する。サイバーセキュリティ企業のカスペルスキーのレポートによると、メタバースにおける搾取や不正使用は今後1年で増加すると予想されている。脅威の種類は、デジタルでの交流で予想される詐欺から、アバター関連の個人情報の窃盗、不正利用まで多岐にわたる。

コインテレグラフは、デジタルリアリティに足を踏み入れたユーザーが直面しうる危険やリスクを詳しく理解するため、サイバーセキュリティ企業ReasonLabsの最高技術責任者兼共同創業者で、マイクロソフトのマルウェア対策ソフトWindows Defenderの元アーキテクトであるアンドリュー・ニューマン氏に話を伺った。

ニューマン氏によると、ユーザーが理解すべき主な概念は、メタバースのアイデンティティが「ユーザーのデジタル・アイデンティティになる可能性が高い」ということだ。

「現実のアイデンティティとオンラインのアイデンティティが融合し続けるにつれ、メタバースでのアイデンティティ盗難のリスクが高まるだろう」

同氏は、ロブロックスなどのプラットフォームでアバター詐欺が既に報告されていることを強調した。ニューマン氏が挙げた例では、ハッカーが最終的にユーザーのデジタル・アイデンティティを盗む目的で、さまざまな理由をつけ、自分たちがユーザーのアバターにアクセスする必要があるとユーザーを説得しようと試みる場合があるという。

デジタル・アイデンティティの脅威はよくあることだが、金銭や仮想通貨がメタバースのアバターに結び付けられるようになると、こうした脅威はますます増加することが見込まれる。ニューマン氏は、メタバースのアバターに費やされる資金が増加していることを受け、消費者に警告を発している。

「私たちは、私たちが物理的な資産を保護するのと同様に、人々がメタバース内の自らのデジタル資産や個人情報を保護するように取り計らう必要がある」

ユーザーが所有できる実質的な価値を持つデジタル資産の量と種類は無限に拡大している。このことが、サイバー犯罪やサイバー窃盗の複雑化と、デジタルリアリティの拡大を助長している。

ブロックチェーンや新しい技術には、透明性やセキュリティの面で多くの期待が寄せられている。だが、ニューマン氏は、それでもユーザーは警戒する必要があると語る。

「従来の銀行ネットワークではなくメタバースにあるという理由だけで、資金が盗まれる心配はないと考えるべきではない」

メタバースにおける個人情報窃盗のもう一つの要素は、未成年者がそのような脅威にさらされやすいということだ。多くの点で、メタバースは若者や若年成人を惹きつけるように作られている。

マインクラフト、フォートナイト、ロブロックスは、いずれも若いユーザー層を惹きつけている。多くの場合、未成年者はサイバーセキュリティやデジタルフットプリントの重要性を理解していない。ニューマン氏によると、オンラインのデジタル世界では、未成年者が直面する脅威が既に存在しているという。しかし、ニューマン氏は次のように指摘する。

「金融は、時間の経過とともに、ゲーム内のバーチャル通貨やバーチャルアイテムから、ゲーム内のより新しい『Web3』アイデンティティと結び付いたリアルマネーや仮想通貨といった、より従来型の金融へと移行する可能性がある」