FRB(米連邦準備理事会)のパウエル議長の発言に注目が集まった23日のジャクソンホール会議だが、話題をさらったのはイングランド銀行のカーニー総裁のようだ。仮想通貨業界ではカーニー総裁の発言を「歴史的な出来事」と捉える専門家もいる。一方、トランプ大統領はパウエル議長の発言に怒り心頭で、「敵なのか」と発言した。

「中央銀行は変わらなければならない」

既報の通り、イングランド銀行のカーニー総裁は、仮想通貨リブラのようなデジタル通貨が基軸通貨としてのドルに取って代わるべきと発言。リブラ反対ムード一色の世界の政治家や規制機関トップと一線を画した。

カーニー総裁のスピーチは、全体的に中央銀行を取り巻く現状への危機感を表したものだった。例えば、アダマント・キャピタルの創業パートナーであるトゥア・デミースター氏が指摘するように、「既存の体制を軽率に受け入れることは誤っている」や「”人工的な主導権を持つ通貨(Synthetic Hegemonic Currency)”が世界貿易における米ドルの支配的な地位を脅かすかもしれない」などと発言した。

デミースター氏は、「歴史的」とし、中央銀行改革の開始だと評価。ビットコインの10年間の成功、忍耐強さ、不遜さがもたらした反応とみている。

また、著名仮想通貨トレーダー@parabolictravは、カーニー総裁の発言について、「ビットコインの利用ケースがは正解で、我々が競争しないと脅威になる」と発言したと解釈。ビットコインの妥当性が確認されることになったと述べた。

パウエル議長はアメリカの敵?

一方、今後の利下げ見通しで注目されたのがパウエル議長の講演だ。市場が100%織り込んでいる9月の利下げだが、パウエル議長は9月の利下げを確約しなかった。

中央銀行による利下げは、ビットコインへのプラス材料と考えられている。

パウエル議長は、米経済は「個人消費が牽引して良好」としつつも「世界経済には減少傾向が見られる」と指摘。「今後、景気拡大を支えるために適切に行動する」と話した

ただ、「金融政策は国際貿易への安定したルールブックを提供できない」とし、今後、貿易での進展がどのように景気見通しに影響を与え、我々の目的達成のために政策を変更するか、注視すると述べた。

パウエル議長の発言にさらなる金融緩和を求めるトランプ大統領はすぐに反応し、痛烈に批判した

FRBは、いつも通り何もしなかった。私がこれからやろうとすることを知ろうとも尋ねようともせずに『話せる』ことに驚きだ。我々が持っているのは、強いドルと弱いFRBだ。私は、双方に『見事に』働きかけてみせよう。米国はうまくやる」

「これからやろうとすること」とは、既報の通り、23日にトランプ大統領が中国に対して課した関税引き上げだ。

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さらにトランプ大統領は、「我々の敵はFRBのパウエル議長か中国の習近平首席、どっちなのか?」と発言した。