マンションや戸建て住宅の価格は、一般的に数千万円ほどであるため、とても貯蓄だけで購入できるものではない。そこで多くの人が住宅ローンを借り入れて、マイホームの購入資金を調達する。

一方でマイホームは生涯のうちに何度も購入するものではないため、住宅ローンの種類や組み方を知らない人も多い。

本記事では、住宅ローンの仕組みや種類、選び方などをわかりやすく解説する。

住宅ローンとは

住宅ローンとは、マイホームを購入するときに借り入れるローンのことだ。自ら居住するための住宅を購入する人が組めるローンであり、投資用の不動産を購入する人は借り入れできない。

国土交通省の調査によると、住宅の購入資金に占める自己資金と借入金(住宅ローン)の内訳は、以下の通りだ。

 

自己資金

借入金
(住宅ローン)

合計

注文住宅

1237万円

2734万円

3971万円

分譲戸建住宅

858万円

3075万円

3933万円

分譲マンション

1560万円

3017万円

4577万円

中古戸建住宅

1026万円

1788万円

2814万円

中古マンション

1190万円

1629万円

2819万円

出所:国土交通省「平成30年度 住宅市場動向調査 ~調査結果の概要

注文住宅や分譲戸建住宅、分譲マンションを購入した人は、平均で3000万円前後の住宅ローンを借り入れていることがわかる。中古戸建住宅や中古マンションを購入した人も、2000万円弱の住宅ローンを借り入れて購入資金を賄っているようだ。

住宅ローンの返済期間は、多くの場合で最長35年だ。ただし完済時の年齢が80歳を超えていると借り入れは困難である。

なお住宅ローンを借り入れるときは、金融機関の審査に通過しなければならない。住宅ローンは、毎月の収入が返済の原資となるため、金融機関の審査では借り入れを予定している人の年収や勤続年数、職業、他の借入状況などが入念にチェックされる。

住宅ローンの返済期間は最長35年間

住宅ローンの金利の種類

金利とは、簡単にいえば返済額に占める利息の割合だ。住宅ローンを借り入れた場合、元本に利息を含めた額を毎月返済していかなければならない。金利が高いほど、毎月の返済額やそれに占める利息額も高くなる。

住宅ローンを組む際は、以下の金利タイプから1つを選ぶ必要がある。

  • 変動金利
  • 全期間固定金利
  • 固定期間選択型

変動金利とは、借り入れから完済までのあいだに、経済情勢や政府の金融政策などに応じて金利が見直される金利タイプだ。借入時の金利は、他の金利タイプよりも低く設定されているため、借入当初の返済負担はもっとも少ない。一方で、途中で金利が変動する可能性があるため、返済途中で毎月の返済負担が増えるリスクがある。

全期間固定金利とは、借り入れから完済までの金利が固定される金利タイプだ。世の中の金利が変動しても、全期間固定金利で借りていれば返済負担が増える心配はない。ただし借り入れ当初の金利は、他の金利タイプと比べてもっとも高く設定されている。

固定期間選択型とは、借入当初から一定期間の金利を固定する金利タイプだ。金利の固定期間は、3年や5年、10年などから選べるのが一般的である。金利の固定期間が終了したあとは自動的に変動金利に移行するが、再び一定期間の金利を固定させることも可能である。金利の固定期間中は、変動金利なみの低い金利が適用されるため、着実に返済を進められる。

住宅ローンの返済方法

住宅ローンの返済方法には「元利均等返済」と「元金均等返済」の2種類がある。

元利均等返済とは、毎月の返済額が一定である返済方法だ。返済当初は、毎月の返済額に占める利息の割合が多くなり、返済をすすめるごとに利息の割合が減って借入れ元本の割合が増えていく。毎月の返済額が一定のため、ライフプランニングや家計の計算がしやすい。

一方で元金均等返済は、毎月の返済負担に占める元金の割合が一定であるため、返済をすすめるごとに毎月の返済額は少しずつ減っていく。借入額が同じである場合、返済総額は元金均等方式のほうが安くなる。

住宅ローンの返済方法2種類図解


住宅ローンの種類

住宅ローンには、大きく分けて以下のような種類がある。

  • 民間融資(民間ローン)
  • 財形住宅融資
  • フラット35

民間融資(民間ローン)

民間融資とは、金融機関や信用金庫、ノンバンクなどさまざまな金融機関が提供する住宅ローンだ。預金業務を行わず貸金業務のみを行うノンバンクも、住宅ローンを提供している。

民間の金融機関が取り扱う住宅ローンは、金利タイプを変動金利と全期間固定金利、固定期間選択型から選べるのが特徴だ。

不動産会社やハウスメーカーなどが金融機関と提携して提供する「提携ローン」も、民間融資に含まれる。提携ローンには「金利が優遇される」「審査に通過しやすい」などのメリットがある。

民間融資では、団体信用生命保険の保険料が金融機関負担となるケースがほとんどである。団体信用生命保険とは、借り入れた人が亡くなったり所定の高度障害状態になったりした場合に、保険金でローンが完済される保険だ。特約を付帯して保障を充実させない限り、住宅ローンを組んだ人は団体信用生命保険の保険料を基本的に負担しなくて良い。

財形住宅融資

財形住宅融資とは、企業の福利厚生の一種である「財形貯蓄」をしている人が借り入れできる住宅ローンだ。「財形貯蓄を1年以上続けている」「申込日前2年以内に財形貯蓄を預け入れている」「貯蓄残高が50万円以上」などの条件に該当すると、利用できる。

財形住宅融資の5年間の固定金利であり、借り入れから5年ごとに金利が見直される。

フラット35

フラット35とは、住宅金融支援機構と民間の金融機関が共同で提供している全期間固定金利型の住宅ローンだ。一般的に住宅ローンの審査で不利になるといわれている自営業や転職して間もない人なども、フラット35であれば借り入れしやすいといわれている。

フラット35には、さまざまなメニューがある。たとえば取得する住宅の耐震性能やバリアフリー性能が一定の基準を満たしていると、借り入れから一定期間の金利が引き下げられる「フラット35S」や、返済期間が最長で50年となる「フラット50」を利用できる。

住宅ローンは主に3種類ある

自分に合った住宅ローンの見つけ方

ここでは自分に合った住宅ローンの見つけ方のうち、とくに重要なポイントを解説する。

返済シミュレーションを確認して金利タイプを選ぶ

住宅ローンの金利タイプは、返済シミュレーションを確認すると選びやすい。

たとえば変動金利と全期間固定金利の返済額の差が、毎月1万円であったとしよう。「毎月1万円しか変わらないのなら、全期間固定金利で借り入れたほうが安心だ」と感じたなら、全期間固定金利を選んだほうが良いと考えられる。

また住宅ローンの返済シミュレーションでは、毎月の返済額に占める借入元本と利息の割合も確認できる。「毎月支払う利息がこれだけ違うなら、変動金利にして借入元本を減らしておこう」と思う人もいるだろう。

なお変動金利で借り入れる場合、金利が上昇したときに繰り上げ返済できる資金を貯められるかどうかも考えると良い。利息額は、住宅ローンの借入残高に金利をかけて計算する。そのため金利が上昇したときに繰り上げ返済をして借入残高を減らすと、返済負担の増加を抑えることができる。

複数の金融機関を検討する

金融機関によって、住宅ローンの金利や団体信用生命保険の保障内容などが異なる。とくに金利は、金融機関によって大きな差があるため、複数の金融機関を比較することで、より有利な条件で住宅ローンを借り入れることができる。

また融資審査の基準も金融機関によって異なる。「A銀行では審査に落ちたが、B銀行では審査に通過できた」というケースもあるため、1つの金融機関で審査に落ちてしまっても、諦めずに他の金融機関に相談すると良い。

自分に合った住宅ローンの選び方

住宅ローンを組む際の注意点

最後に住宅ローンを組む際の注意点を2つ解説する。


借入時に諸費用がかかる

住宅ローンを借り入れるときは、金融機関に事務手数料や保証料を支払うのが一般的だ。事務手数料や保証料の金額は、金融機関によって異なる。また金融機関によっては、保証料の支払いが不要な場合もある。そのため金融機関を選ぶときは、諸費用の額を確認し比較することが大切だ。

さらには住宅ローンの契約書に添付する印紙税や、登記の際にかかる税金(登録免許税)、登記を代行してもらう司法書士に対する報酬なども支払う必要がある。

住宅ローンの借り入れ時に支払う諸費用は、現金で支払うのが一般的だ。住宅購入時の頭金と合わせて計画的に資金を準備しよう。

今後のライフプランをもとに購入予算を決める

住宅の購入予算は、自己資金+住宅ローンの借入額で決まる。ひと昔前は、住宅を購入する際、2割の頭金が必要といわれていた。しかし2021年10月現在、住宅ローンの金利は戦後最低の値で推移していることもあり、頭金を準備せずとも住宅ローンを組める。

頭金の準備に時間がかかり、住宅ローンの借り入れが遅れて返済が老後生活にまで及ぶのであれば、住宅ローンの借入額を増やすのも方法だ。

一方で住宅ローンは、完済できる見込みがある額を借り入れることが大切だ。住宅ローンの返済期間は、一般的に20〜30年と長期間にわたる。そのため完済するまでに、子どもの出産や進学、自分自身や配偶者の転職、転勤、退職など、さまざまなライフイベントを経験しやすい。

こうしたライフイベントが発生すると、毎月の世帯収入が減ったり、支出が増えたりすることがある。住宅ローンの返済を滞納すると、最悪の場合、金融機関にマイホームを差し押さえられて競売にかけられてしまいかねない。借り入れたときと家計の収支が変化しても、返済を継続できる金額を借り入れることが大切だ。

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