仮想通貨擁護派で「クリプトママ」として知られる米証券取引委員会(SEC)のヘスター・ピアース委員が、ICO(イニシャル・コイン・オファリング)をめぐるSECの決定に異を唱えた。
SECの主張
9月15日、SECは、Unikrn社が未登録でトークンを使った資金調達=ICOを行ったとして罰金を課したと発表。Unikrn社は、610万ドル(約6億4000万円)の罰金を支払い、投資家に分配する。SECが主張する未登録の販売について同社は肯定も否定もしない立場をとった。
Unikrn社は、2017年にICOで3100万ドル(約32億5000万円)を調達。米著名投資家マーク・キューバン氏の支援を取り付けるなど話題となった。Unikrn社はオンラインゲームを使ったギャンブルをするためのプラットフォーム構築を目指していた。
同社は、独自トークンであるUnikrn ゴールド(UKG)を10日以内に永久に無効にすることも命じられた。
SECの主張は以下の通りだ。
「Unikrnは、投資家に対してセカンダリーマーケットでUKGトークンの売買ができるようになりUKGトークンの需要、そして価値が高まると約束した。UnikrnはUKGトークンを証券を含む投資契約として提供・売却していたにもかかわらず、登録をせず例外としての資格も有していなかった」
クリプトママが異論
SECのUnikrn社に対する措置に対してピアース氏はイノベーションを阻害するものとして反論。「詐欺的な行為」を行ったわけではなく「未登録」である点に基づいてSECが行動を起こしたことを問題視した。
ピアース氏は「未登録であるということ自体が深刻な問題であり執行機関はそのような違反を発見する努力をして損害を受けた投資家を保護するべきだ」としつつも、「イノベーションを阻害してイノベーションがもたらす経済成長を抑えるような制裁を避けるべきだ」と主張。次のように続けた。
「私は、今回の行動と付随する制裁はそのような結果をもたらすと考えている」
同氏は、SECがUnikrn社に巨額罰金とトークン発行の永久停止を求めたことについて「事実上運営をやめさせる措置」として問題視した。またトークン販売が「証券」販売に当たるかどうかについては極めて主観的であり、起業家にとってわかりづらいのが現実と述べた。
その上でピアース氏は、規制安全地帯( regulatory safe harbor)の創設を改めて提案。トークンを使うスタートアップに対して現状のような規制を敷くのではなく、セイフハーバー(安全地帯)でまず育てることの重要性を指摘した。
同氏が提案する規制安全地帯は、詐欺防止のための法律遵守をもとに3年間の猶予を与えるものだ。ピアース氏は、規制安全地帯があればUnikrn社はトークンを放棄するような事態に追い込まれず、「トークンの新たなユースケイースを特定してユーザーベースを拡大するために時間とリソースを使えるかもしれなかった」と述べた。