FXcoinのシニアストラテジストである松田康生氏は8日、仮想通貨イーサリアムクラシック(ETC)に対する51%攻撃の影響を考察したレポートを発表し、今後、規模の小さいコインの淘汰やPoWからPoSへのシフト進む他、仮想通貨リップル(XRP)に一時的に買いが入る可能性を指摘した。

7日、マイニングプールのイーサチェーンが、仮想通貨イーサリアム・クラシック(ETC)に対する51%攻撃が成功したと発表。51%攻撃とは、PoW(プルーフ・オブ・ワーク)を採用するブロックチェーンにおいて過半数を占めたマイナーが都合のいいようにブロックチェーンを書き換えることで、イーサリアムクラシック上での取引が遅れたり覆されたりするほか、二重支払いも発生する。

この事態を受けて、米国の大手仮想通貨取引所コインベースは、イーサリアムクラシックの取引を全て停止すると発表。日本でもコインチェックとビットフライヤーがイーサリアムクラシックの入出金を一時停止した。

PoWからPoSへ

松田氏は、昨年11月のビットコインキャッシュの分裂騒動に加えて今回のイーサリアムクラシックへの51%攻撃が発生したことを受けて、次のように分析した。

「(市場参加者は)BTCとBCH、ETHとETCの様にコンセンサスアルゴリズムが同様で互換性が高い通貨の場合、時価総額が大きく、ハッシュレートが高い通貨から、一時的にコストを度外視してハッシュパワーをシフトすることで、時価総額が小さい通貨をコントロールすることが可能である例を目の当たりにした」

同氏によると、「ETHのマイナーの2.5%をETCにシフトする事により51%攻撃が可能になる」(昨年5月のレート)という研究もあるという。

その上で同氏は、今後、ビットコイン(BTC)やイーサリアム (ETH)などは安泰だろうが、イーサリアムクラシック(ETC)やビットコインキャッシュ(BCH)/ビットコインSV(BSV)など規模の小さいコインにとっては厳しい展開になると予想。また、無意味なハードフォークは牽制されるようになる他、PoWからPoS(プルーフ・オブ・ステーク)へのシフトが進むと分析した。

XRPは「一時的な買い」

さらに、同氏は、POWを使っていないXRPには「一時的に買いが入る可能性がある」と指摘した。仮想通貨XRPは、PoWでもPoSでもないPoC(プルーフ・オブ・コンセンサス)を採用。不特定多数の一般人でなく、発行主体が認めた機関だけが取引の承認作業ができる仕組みになっており、51%攻撃への耐性があると考えられている。

リップル社のデイビッド・シュワルツCTOも、XRPの優位性について次のようにツイートした。

「またPoWを採用するブロックチェーンが二重支払いの攻撃に苦しんでいる。今回はETCだ。XRPレジャーの分散型同意プロトコルは、このリスクを排除している」

PoS(プルーフ・オブ・ステーク)とは、仮想通貨を維持・管理するシステムの一種。仮想通貨の保有量(ステーク)の大小により、仮想通貨の維持・管理にかかる作業に対する報酬が得やすくなる特徴がある。これによりPoWのシステム的欠陥であった、中央集権化への危惧(高性能コンピュータを大量にもてるものが仮想通貨を操れる)や電力の大量消費などが解決された。

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