フランス中央銀行のデニス・ボー副総裁は、ステーブルコインをはじめとする仮想通貨が決済システムの強化に貢献できる可能性があると語った。
1月15日にパリで開催されたステーブルコインをテーマとするカンファレンスで講演した。
ボー副総裁は、ブロックチェーン技術により、ビットコインをはじめとする新しい資産が登場したと述べ、ビットコインやイーサリアムのような第一世代の仮想通貨から、現在は第二世代の仮想通貨が登場していると指摘した。
「JPモルガンコインや、UBSのユーティリティ・セトルメント・コイン、フェイスブックのリブラなど、第二世代のものがステーブルコインとして登場している」
その上で巨大テック企業や大手金融機関がサポートするステーブルコインならば「グローバルにリーチでき、決済システムの強化に貢献できる可能性がある」と語った。
ボー副総裁は、現状の送金ネットワークは「グローバルレベルで迅速で安価な送金をサポートできる状況からは程遠い」とし、ステーブルコインは「より安く、より簡単で、リアルタイムかつ匿名でピアツーピア決済を提供し、既存のプレイヤーに挑戦することができる」と述べている。
ステーブルコインのリスクにも言及
一方でステーブルコインには「重大なリスクをもたらす可能性もある」と指摘する。
コインの発行体に問題があった場合のユーザーへの払い戻しのシステムが無い点や、マネーロンダリグや消費者保護に絡むリスクといったものだ。
「ステーブルコインが支払いシステムの安全性を損なう『弱いリンク』にならないようにするため、リスクに真剣に取り組む必要がある」
またグローバルに流通するステーブルコインの存在は「国際通貨システムに影響を与え、通貨主権に課題をもたらす可能性がある」とも語っている。
規制当局が焦点を当てるべき3つのタスク
規制・監督当局は、具体的に3つのタスクに焦点を当てるべきだと、ボー副総裁は強調した。
1つは、ステーブルコインが支払いシステムの効率性に与えるポジティブな影響を維持するための規制対応に取り組むことだ。「急速なイノベーションのペースを考えれば、機敏かつ実用的で比例的な規制対応を構築する」べきと主張している。
2つ目は、国際レベルでの規制・監督の枠組みの調整だ。グローバルに展開するステーブルコインの登場を考慮し、「世界レベルでのより広範な調整が必要だ」と指摘。「同じ活動、同じリスク、同じ規則」の原則をもとに、全体的な一貫性が必要だと主張した。
3つ目は、現在の決済・支払いシステムの弱点を再検討し、実証実験などのテストを進めていくことだ。フランスの中央銀行が2020年第1四半期にデジタル通貨の実証実験を開始することを例に挙げ、現在の金融システムにイノベーションや効率性を適応させるための取り組みを進めるべきだと強調した。
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