トランプ政権の首席戦略官を務めたスティーブ・バノン氏が、仮想通貨の世界でビジネスを始める計画を立てていることが明らかになった。ニューヨーク・タイムズが14日に報じた。トランプ大統領がアメリカの政治を崩壊させたように、仮想通貨が銀行を崩壊させることに賭けているという。

 ニューヨーク・タイムズによると、バノン氏は、自身の投資会社「バノン&カンパニー」を通してICOをすることについて、仮想通貨の投資家やヘッジファンドマネジャーと個人的に会合を重ねているという。ただバノン氏は、超保守的という自分のイメージでビジネスを失敗させたくないため詳細を明かさなかったという。一方でバノン氏は、ビットコインに「結構な投資額」を入れているという。

 バノン氏といえば今年1月まで、超保守で反体制派のメディアであるブレイトバートの経営をする一方、去年8月まではトランプ大統領の再側近だった。トランプ政権から解雇された理由は、マイケル・ウォルフ氏の著書「炎と怒り トランプ政権の内幕」の中でトランプ大統領を批判したからだと報じられている。

 バノン氏が最初に仮想通貨に興味を持ったきっかけは、元子役の俳優で仮想通貨起業家のブロック・ピアース氏からの影響だという。バノン氏はピアース氏のゲーム会社で副会長を務めていた。トランプ政権での仕事が忙しかったため、仮想通貨関連の仕事を始められなかったという。仮想通貨のヘッジファンドを創業したティモシー・ルイス氏は、ニューヨーク・タイムズとのインタビューで、バノン氏の仮想通貨の技術に関する知識に感銘を受けたと発言。ルイス氏は先月にバノン氏と面会して、仮想通貨やICO規制について話したという。

 さらに今年の春にバノン氏は、「嘆かわしい者たちのコイン」という独自の仮想通貨を作るというアイデアを考えていたという。2016年の米大統領選の選挙期間中、ヒラリー・クリントン元国務長官がトランプ氏の支持者のことを「嘆かわしい人々」と呼んでいた。

 3月にチューリッヒで行なった講演の中では、バノン氏は仮想通貨の可能性を称賛し、欧州の反体制派を鼓舞した。

 バノン氏は、イタリアが大理石で裏付けたデジタル通貨の発行を画策しているように、国が独自の仮想通貨を発行することの重要性について言及。

 「あなたの通貨をあなた自身がコントロールできなければいけない。そうでなければ全ての政治運動は、通貨をコントロール者たちによって形作られてしまう。私にとっては当たり前の考えだ」

 またバノン氏は、中央銀行が「通貨の価値を下げ」て市民を「借金奴隷」にすることで市民から奪ったパワーを、仮想通貨は再び市民に取り戻させると発言。

 「通貨をコントロールするということは、全てをコントロールするということだ。破壊的なポピュリズム運動がおきるだろう。中央の権力から支配権を取り戻す。革命だ」