住宅ローンを組むためには、金融機関の審査に通過する必要がある。審査に通過できなければ住宅ローンは組めなくなるため、夢のマイホームは購入できなくなるだろう。
住宅ローンの審査では、申し込んだ人の年齢や年収、勤続年数、購入する物件の価値など、さまざまな点がチェックされる。本記事では、住宅ローンの審査基準や借り入れまでの流れ、審査に落ちる理由などをわかりやすく解説していく。
住宅ローンの審査とは
住宅ローン審査とは、住宅ローンを申し込んだ人に融資をしてもよいか判断するために金融機関が行う審査だ。
銀行や信用金庫などの金融機関は、ボランティアではなく事業のために住宅ローンを取り扱っている。住宅ローンを借り入れた人は、元本の返済と合わせて利息を支払わなければならない。利息は、金融機関にとっての重要な収益源となる。
住宅ローンは、完済してもらうことを前提に貸し出すため、途中で返済を滞納されてしまうと金融機関に損失が発生することになる。そこで金融機関は、住宅ローンを申し込んだ人が完済できるかどうかを入念に審査するのだ。
住宅ローンの審査基準
住宅ローンの審査で確認される項目の例は、以下のとおりだ。
- 年齢(借入時・完済時)
- 健康状態
- 購入する住宅の担保評価
- 借り入れる人の年収・勤続年数・雇用形態・職業
- 返済負担率
住宅ローンの審査基準や確認される項目は、金融機関によって異なるものの、一般の顧客に向けては開示されていないケースがほとんどだ。
年齢(借入時・完済時)
住宅ローンは、借入時の年齢と完済時の年齢に制限が設けられているのが一般的だ。国土交通省の調査によると、住宅ローンを取り扱う金融機関の99.1%が完済時の年齢を確認すると回答している。借入時の年齢を確認すると回答した金融機関は、全体の98%だった。
たとえば「借入時の年齢が20歳以上70歳未満」「完済時の年齢が80歳未満」と設定している金融機関で住宅ローンを組むとしよう。年齢が50歳であれば、住宅ローンを申し込むことはできるが、返済期間は最長で30年となる。金融機関が取り扱っていたとしても、返済期間が35年や40年の住宅ローンを組むことはできない。
借入時の年齢や完済時の年齢は、金融機関のホームページや住宅ローンの説明書などに記載されているため、申し込みをする前に確認しておこう。
健康状態
住宅ローンを組む人の多くは、団体信用生命保険に加入する。団体信用生命保険とは、住宅ローンを借り入れた人が亡くなったり所定の障害状態に該当したりした場合に、保険金でローンが完済される保険だ。
多くの金融機関は、団体信用生命保険への加入を住宅ローンの融資条件としている。そのため金融機関の審査では、住宅ローンを申し込んだ人の健康状態が確認される。すでに病気で治療を受けていたり過去に大病を患った経験があったりすると、審査に落ちてしまうことがある。
購入する住宅の担保評価
住宅ローンを組むと、購入した土地や建物が担保となる。借り入れた人が返済できなくなったとき、金融機関は担保となっている不動産を差し押さえて競売にかけ、売却して得たお金で融資金を回収しようとする。
担保となっている不動産が、競売にかけたとき充分な価格で売れなければ、金融機関は融資金を回収できなくなってしまう。そのため住宅ローンの審査では、土地や建物に担保としての価値があるか入念にチェックされる。
借り入れる人の年収・勤続年数・雇用形態・職業
住宅ローンは、借り入れた人の年収から返済される。住宅ローンの返済期間は、20年や30年など長期間にわたるのが一般的だ。借り入れた人が安定した収入を得られる見込みがなければ、返済を滞納される恐れがあるため、年収や勤続年数、雇用形態、職業などが入念に確認される。
会社員や公務員は勤務先が発行する「源泉徴収票」に記載されている収入をもとに判定される。対して自営業やフリーランスは、直近3期分の確定申告書や納税証明書に記載される所得で判定される。所得とは、売上から必要経費を差し引いた金額だ。
返済負担率
返済負担率とは、年収に占める年間返済額の割合だ。たとえば年収が500万円、年間の返済額が125万円である場合、返済負担率は125万円÷500万円=25%だ。住宅ローンの審査では、返済負担率が金融機関の定める一定割合を超えていないかがチェックされる。
なお返済負担率を計算するときの年間返済額には、 住宅ローンだけでなくマイカーローンや教育ローン、奨学金、携帯電話の分割払いなども含まれる点に注意しよう。
住宅ローンの審査から借入までの流れ
住宅ローンの審査から借入までの流れは、おおむね以下のとおりだ。
- 事前審査
- 正式申込
- 本審査
- 住宅ローン契約(金銭消費貸借契約兼抵当権設定契約)
- 融資の実行
事前審査とは、本審査に通過できる見込みがあるかチェックするための審査である。住宅ローンの本審査を申し込むのは、基本的にマイホームを購入する契約や建築する契約を結ぶときだ。契約を結んだにもかかわらず、本審査に通過できない事態を防ぐために、事前審査を申し込むのが一般的である。
審査結果が分かるまでの期間は、 事前審査が数日から数週間であるのに対し、本審査は数週間から1カ月以上かかることもある。
本審査に通過すると、金利や返済期間などの借入条件が提示される。借入条件に合意し、住宅ローンの契約を結ぶと、2週間〜1カ月程度で融資額が不動産会社に振り込まれる形で融資が実行される。
住宅ローンの審査に落ちる理由
ここでは、住宅ローンの審査に落ちる代表的な例について解説する。
収入が安定していない
金融機関から収入が安定していないと判断されると、住宅ローンを借り入れるのが困難となる。会社員のような無期雇用で働く人は、住宅ローンの審査に有利であるといわれている。しかし会社員であっても、転職して間もない人や短期間で転職を繰り返している人は、金融機関からの評価が悪くなって審査に落ちてしまう恐れがある。
また自営業やフリーランス、派遣社員、パートなども、収入安定性の面から住宅ローンの審査に通過しにくいといわれている。
信用情報に傷が付いている
信用情報とは、個人の借入契約や返済状況などに関する情報であり、指定信用情報機関によって管理されている。
住宅ローン審査時に金融機関は、個人の信用情報を指定信用情報機関に問い合わせて確認する。クレジットカードの支払いやローンの返済などを長期間にわたって滞納した履歴が指定信用情報機関に残っていると、住宅ローンの審査に落ちてしまう。
他の借入が多い
自動車ローンや教育ローンなどを借り入れており、住宅ローンを借り入れたときの返済負担率が金融機関の既定値を超えてしまうと審査に落ちるだろう。住宅ローンの借り入れを考えている方は、申し込みをする前に他の借り入れを完済しておくのも方法だ。
なお住宅ローンの審査時に申し込んだ人の現在の借入状況も、指定信用情報機関に問い合わせて確認されるため、虚偽の申告をしても必ず発覚する。
住宅ローン審査に落ちた時の対処法
住宅ローンの審査に落ちたからといって、諦める必要はない。住宅ローンの審査に落ちた場合は、以下のような方法を試すと審査に通過できる可能性がある。
- 複数の金融機関で審査を依頼する
- 頭金を増やす・借入額を減らす
- フラット35を検討する
金融機関によって、住宅ローンの審査で確認される項目や審査に通過できる基準が異なる。1つの金融機関で住宅ローンの審査に落とされても、他の金融機関で審査に通過できる可能性がある。金利や借入時の手数料なども金融機関によって異なるため、住宅ローンを組む際は複数の金融機関に相談すると良い。
返済負担率の高さが原因で住宅ローンの審査に落ちたと想定されるときは、頭金を増やしたり借入額を減らしたりするのも方法だ。ただし貯蓄のすべてを頭金に回してしまうと、住宅の購入後に「病気で働けなくなった」「退職して世帯収入が低下した」などの事態が発生すると資金が不足する恐れがある。今後の人生を考えたうえで、頭金の額を慎重に決めよう。
フラット35は、住宅金融支援機構という独立行政法人が、民間の金融機関と共同で提供している住宅ローンだ。フラット35は、自営業のような民間金融機関の住宅ローン審査に不利であるといわれる人でも融資してもらえる可能性がある。
住宅ローン審査に落ちないようにすべきこと
個人の信用情報に傷が付いていると、住宅ローン審査に通過できる可能性が著しく低下する。審査に落ちないようにするためには、クレジットカードや携帯電話の支払い、ローンの返済などを滞納しないことが大切だ。
また事前審査に通過したあと、転職をしたり新たな借り入れをしたりすると、本審査で落とされてしまう恐れがある。転職や新たな借り入れを検討しているのであれば、住宅ローンの本審査に通過し融資が実行されたあとにするのが懸命だ。
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