多くのビットコイン支持者は、中央銀行による大規模な金融緩和でインフレが起こり、ビットコイン(BTC)価格の急上昇をもたらすというストーリーを信じている。しかし、経済の専門家からは、インフレよりもデフレの可能性が高いという予測が出ている。

現在の新型コロナウィルスによる経済的混乱を受け、米国の連邦準備制度理事会(FRB)は「無制限の量的緩和」に取り組んでいる。

ビットコイン支持者は、無制限の紙幣発行がハイパーインフレを引き起こし、発行上限が2100万BTCであるビットコインの需要が高まると信じている。

たとえば、仮想通貨取引所パックスフルによる仮想通貨投資家への調査では、米国のビットコイン保有者の半分以上が、仮想通貨をインフレに対するヘッジ手段と見なしている。

仮想通貨アナリストのPlan Bも、FRBによる量的緩和策がビットコインにプラスになると主張している

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“デフレが来る”

ただ経済専門家らからは、インフレではなくデフレが発生する懸念が出ている。

ニューヨークタイムズのニール・アーウィン記者は、原油先物価格がマイナスとなったことはデフレの兆候であると指摘している

「COVID-19の危機は経済に対する桁違いのデフレショックであり、世界の生産的資源が空回ってしまっている」と書いている。

原油の場合、需要の急落で供給過剰となり、価格を押し上げてたわけだが、アーウィン氏は同様の需給効果が経済全体に及ぶと論じている。

レストランから航空会社に至るまであらゆるところで需要が急減している。スポーツアリーナは空っぽであり、米国では2200万人の労働者が失業申請をしている。

「これらすべてのは、デフレによる経済崩壊、つまり商品やサービスの供給の過剰、そしてその結果としての価値下落を示している。ほとんどの人々が人生で見たことがないものだ」

INGもデフレに警鐘

大手金融機関INGのチーフエコノミスト、ジェームズ・ナイトレイ氏も同様の見解を示している。エネルギー価格の暴落と、急増する失業は消費者物価指数(CPI)のマイナスをもたらすと指摘している。

「米国はデフレへの道にある」との記事では、ナイトレイ氏は量的緩和(QE)がインフレにつながるという期待は、リーマンショック後の「FRBのQE1、QE2、QE3の後にも実現されなかった」と指摘する。さらにFEBの3月の会合の議事録を引用し、FRBが経済再開と量的緩和でも「インフレは弱まると予測された」と考えていると指摘している。

BTCはインフレに対するヘッジ手段

Plan Bが指摘するように、ビットコインがインフレに対する優れたヘッジ手段であることは間違いがない。ハイパーインフレを経験したベネズエラやジンバブエでは、実際にそのような目的で使われてきた。直近でもアルゼンチンでビットコインの需要が増加している。

しかし、経済専門家らの言葉を信じるならば、近い将来、先進国でハイパーインフレが起こる可能性はそれほど高くないかもしれない。

翻訳・編集 コインテレグラフジャパン