欧州中央銀行(ECB)のマリオ・ドラギ総裁は12日、欧州議会にてECBが独自のデジタル通貨を発行する「計画は無い」と述べた。中国やロシアなどと異なりデジタル通貨に対するEUの慎重な姿勢を貫いている。

ジョナス・フェルナンデス欧州議会議員の質問に答える形で、ドラギ氏はECBがデジタル通貨の利用を検討する以前に、デジタル通貨の基幹技術が依然として「かなりの開発」を必要としていると指摘。「ECBおよびユーロシステムは現在のところ、中央銀行のデジタル通貨を発行する計画を立てていない」と、述べた上でドラギ氏は次のように述べた。

「中央銀行のデジタル通貨(中略)を発行するために使用される可能性がある技術は、まだ十分に試験が行われておらず、中央銀行の環境下で使用できるようになるまでにさらにかなりの開発が必要だ」
「家庭や企業向けの個々の口座を中央銀行が管理することになれば、中央銀行が銀行部門との小口預金獲得競争に参入することになり、相当な運用コストとリスク発生に帰結する可能性がある。」

EUの28の加盟国では、現金通貨の需要が「伸び続けている」ことに言及しつつ、現在のところユーロ圏でデジタル通貨を発行する「明確な必要性はみられない」と付け加えた。

一方でドラギ氏は次のようにも述べた。

「とはいえ、私たちは、現金を補完するモノとしてデジタル通貨を発行した場合に生じるであろう結果について、慎重に分析を進めている」

今年すでに、ECBと国際決済銀行(BIS)が出した共同報告書の中で、デジタル通貨を発行した場合に生じる 「副作用」が焦点になっており、また、同報告書では事前にさらに多くの研究が必要であることが述べられている。