イーサリアムは5月7日、重要なネットワークアップグレード「ペクトラ(Pectra)」を無事に実装したが、イーサ(ETH)の価格やデリバティブ指標にはほとんど反応が見られなかった。この鈍い市場の反応はトレーダーを驚かせ、ETHが2200ドル水準まで上昇する見込みが本当にあるのか、という疑問が浮上している。

Ether 30-day futures annualized premium. Source: Laevitas.ch

ETH先物のプレミアムは5%の中立水準を下回るままで推移しており、レバレッジをかけた強気派の関心が乏しいことを示している。特にペクトラアップグレード後もこの指標は3%のまま変化がなく、トレーダーはポジションを調整しなかったようだ。

この低調な反応の一因には、世界的な貿易摩擦による景気後退リスクなど、マクロ経済への懸念があると考えられる。しかし、ETHへの関心の低さは最近始まったわけではない。2025年の第1四半期、ETHは仮想通貨全体の時価総額に対して28%もアンダーパフォームしている。

ペクトラアップグレードによる価格インパクトの乏しさは、より広範な不満を映し出している。競合ブロックチェーンが台頭するなかで、イーサリアムの優位性は揺らぎ始めている。

Solana monthly active addresses vs. layer-1 competitors. Source: Token Terminal

イーサリアムのレイヤー1手数料は今年2月中旬以降、1ドルを下回る水準まで低下しており、ネットワーク利用の障壁は軽減されているはずだ。しかしToken Terminalのデータによると、レイヤー2の代表格「Base」の月間アクティブユーザー数は1030万人にとどまり、ソラナ(8220万人)やBNBチェーン(2590万人)には大きく水をあけられている。

ほかのネットワークとの競争

競合ネットワークをみれば、ソラナは統合的なUXでトークンローンチにおいてDEXセクターを席巻しており、ハイパーリキッドも永久先物取引で高い実績を見せている。さらにトロンはステーブルコイン領域で急拡大中だ。トレーダーの関心は必ずしもイーサリアムの分散性やセキュリティにあるわけではないようだ。

Blockchains and DApps 30-day fees, USD. Source: DefiLlama

イーサリアムの総ロック価値(TVL)は537億ドルで依然として業界トップを維持しているものの、過去30日間のネットワーク手数料は1900万ドルにすぎない。一方でトロンは同期間に5180万ドル、ソラナは3940万ドルの手数料を稼ぎ出しており、収益面でも存在感を示している。

Alchemyのエンジニアリング責任者ノアム・ハーウィッツ氏によると、ペクトラアップグレード以降、イーサリアムの「ブロブ手数料」は過去最低水準に低下しているという。同氏は、ETHの成長にはロールアップの改善を含めたベースレイヤーのスケーラビリティ強化と、より滑らかなユーザー体験の実現が不可欠だと指摘する。

イーサリアムのレイヤー2エコシステムでは資産やデータのブリッジが依然として課題であり、ユーザーはソラナやBNBチェーンのようにDApps間を自由に行き来できない。ペクトラは前進の一歩とはいえ、こうした根本的な問題を解消するには至っていない。そのため、ETHは3月上旬の2200ドル台を再び回復するには至っていない。

現在の1810ドル水準から2200ドルへの上昇を達成するためには、投資家に対して「ネットワークの進展が実際に利益を生み出している」という明確なメッセージが必要だろう。ステーキング利回りの改善や、DApps利用を促す新たなインセンティブ導入が、ETH需要の拡大につながる鍵となりそうだ。

本記事の見識や解釈は著者によるものであり、コインテレグラフの見解を反映するものとは限りません。この記事には投資助言や推奨事項は含まれていません。すべての投資や取引にはリスクが伴い、読者は自身でリサーチを行って決定してください。

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