3月に施行されたエストニア政府のマネーロンダリング対策(AML)・テロ資金防止(CFT)規制の強化に伴い、約400社の仮想資産サービスプロバイダー(VASP)が自主的に廃業したり、認可が取り消された。

改正された法律ではVASPの定義範囲が拡大され、VASP企業にはエストニアとの正当な関係が求められ、ライセンス料が増額され、資本および情報報告要件が強化された。また金融活動作業部会(FATF)のトラベルルールも導入された。 

エストニアの金融情報ユニット(FIU)の5月8日の声明によれば、3月15日のAML法改正以降、国内の仮想資産サービスプロバイダーのうち約200社が自主的に廃業した。

また、189社は「要件の遵守されていない」として認可が取り消された。 

金融情報ユニットのディレクターであるマティス・メーカー氏は、「認可を失ったサービスプロバイダが提出した書類や、その運営方法、関与するリスクを考慮すると、法改正に対する立法者の対応や改正前後の監督は適切であった」とし、「認可の更新では、すべての監督者が驚くような状況を見た」と言う。 

FIUによれば、5月1日時点でエストニアに登録されているアクティブな仮想通貨企業は100社だった。

FIUは、強制的に閉鎖された企業の中では登録情報を巡っていくつかの問題も発覚した。 

例を挙げると、いくつかの企業では、本人の知らない間に役員や企業連絡先が登録されていた。また、履歴書に虚偽の経歴を記載している人物がいくつかの企業で確認されたという 

また、多くの企業が互いに同じビジネスプランをコピー&ペーストしており、エストニアとの「いかなる論理的または関連性のある繋がりもない」とされている。

エストニア政府は過去数年間、強力なAML法を制定するための綿密な取り組みを行ってきた。これは主に、2018年にデンマークの大手銀行ダンスク銀行のエストニア支店を通じて約2350億ドルの不正資金がマネーロンダリングされていたことが発覚したためだ。 

また、ロシアとウクライナとの間で継続中の戦争も影響を与えている。エストニアは米国との協力の一環として、厳格なAML規制を通じて「ロシアの戦争マシンを支える収益を遮断し、国際金融システムを保護する」ための取り組みを強化している。 

さらに、エストニアは欧州連合(EU)の加盟国であるため、2025年初頭に施行される予定の暗号資産市場(MiCA)法を近いうちに実施する必要があるという事情も、最近のAML法強化に寄与している。 MiCAの下では、仮想通貨企業は厳格なAMLおよびCFTの要件に対応しなければならない。