ニューヨーク金融サービス局 (NYDFS)が、暗号通貨業界における独自の新しいレギュレーションを制定してから、2015年の6月から8ヵ月の間、たった一つしかライセンスが承認されていないようだ。

 

行政機関による受け入れを促進するためにその規制は始まった

NYDFSがニューヨークで同計画を開始するとの内容がアナウンスされた当時、そのニュースは業界をリードする専門家たちによって、ポジティブなものとして受け止められていた。その多くが、一時的に暗号通貨業界が規制される可能性がある一方、行政機関による受け入れが増えつつあり、うまくいけば、一般の人々も新たな技術を利用し易くなるだろう、として、現実的には大きな利益となる可能性があると考えていた。

 

NYDFSのスポークスマンは、Fortune誌に次のように語っている―

 

「常に規制賛成派か否定派、両極端な議論というのはつきものですが、長い目で業界内のことを鑑みれば、BitLicenseにとって良い結果になると考えています。仮想通貨がより広く利用されていけば、消費者をしっかりと保護、監督すること(顧客の資産がブラックホールに吸い込まれないようにするために)が重要になってくるでしょう」

 

BitfinexやBitQuick、BTCGuild、Eobot、Genesis Mining、GoCoin、Kraken、LocalBitcoins、Paxful、そしてPoloniexなどの多くの企業が、BitLicenseと関わり合いになる必要はないとして、ニューヨークを離れる決断をしています。「これは全く不必要なものですし、市場の自由化によるイノベーションにとって障壁でしかありません」と、Genesis Miningは自社のブログに書いている。サンフランシスコに本社を置くKrakenは、「このライセンスに関する条項は、ニューヨーク市民にサービスを提供する市場機会から逸脱しています。従って、我々にはニューヨークから撤退する以外選択肢が存在しなかったのです」と述べている。

 

ライセンス承認の難しさ

2015年の6月に同プログラムが始まって、8ヵ月が経ったにもかかわらず、Circle社への1ライセンスしか承認されていない。CoinDeskが伝えるところによると、「ビットコイン取引所であるCoinbaseや、ストレージを専門にするXapoなどのような資金が潤沢な企業の中にも、幾つかまだアプリケーションが開発中であるところも存在している」という。

さらにCoinDeskは、NYDFS代表によってメディアに伝えられた内容は、”21ものスタートアップ企業が現在BitLicenseによるセーフハーバー規定の元動いているが、ニューヨークにおけるビットコイン取り扱いの認可を受けるための正式な確認待ちである”という趣旨の物だったと述べている。

ライセンス承認のためのコスト自体は5,000ドルだが、事務処理は多岐に及び、法的な支援が必要なため、さらに費用がかかる。Coinsetter CEO、Jaron Lukasiewicz氏はFortune誌に、およそ50,000ドル近い費用をBitLicenseへの申請のために費やしたと語っている。Bitstampの最高法務責任者、George Frost氏はCoinDeskに、100,000ドル近い出費だったと語っている。

 

次にBitLicenseに起こりうることとは

前NYDFS弁護士であるDana Syracuse氏が、「今のところ当プロセスは従来のマネーサービス事業(MSB)におけるライセンスによるものと何ら変わりはない」として、企業が承認されるためにはまだセーフハーバー条項の元で事を運ばなければならない旨を示唆し、新規プログラムを擁護したため、業界内ではややNYDFSは批判されている傾向にある。

しかし、長い間ニューヨーク州におけるMSBのための申請には、費用が多くかかり、手続きは遅く、政治的に弁護士団や会計士などと繋がりのある企業にとっても難しく、ましてや小さなスタートアップ企業にとってはさらに難しいため、この政策は失敗に終わったと言える。つまり、BitLicenseによるプロセスが従来の物と何ら変わらない、というSyracuse氏の発言は、業界における承認の遅さへの懸念を意図せず認めてしまっていることになるのだ。

ニューヨーク金融サービス局がニューヨークでBitLicenseによる認可を受けずに運営を続けている企業に対してどの程度反感を持ち、行動を起こそうとしているのかは定かではない。BitLicenseを取得することは、”取得してもいい”が、”さほど重要ではない”程度に考えるべきなのかもしれない。「来年はビットコインにとって大きな年になると強く感じています」とLukasiewicz氏は語り、「NYDFSの動向に注視し、次に何が起こるのか、成り行きを見守ろうと思います」と、結んだ。