著者 Hisashi Oki dYdX Foundation Japan Lead
早大卒業後、欧州の大学院で政治哲学と経済哲学を学ぶ。その後、キー局のニューヨーク支局に報道ディレクターとして勤務し、2016年の大統領選ではラストベルト・中間層の没落・NAFTAなどをテーマに特集企画を世に送り込んだ。その後日本に帰国し、大手仮想通貨メディアの編集長を務めた。2020年12月に米国の大手仮想通貨取引所の日本法人の広報責任者に就任。2022年6月より現職。
2023年10月27日、dYdXチェーンがローンチしました。これにより、「ユーザーのユーザーによるユーザーのための取引所」の土台ができました。どういうことでしょう?以下で解説します。
dYdXチェーン立ち上げ前のdYdXは、いわば「ハイブリッド型取引所」として機能していました。ユーザーがメタマスクなどのウォレットを通じて自己資産を管理できるという点では「分散型」ですが、オーダーブック(取引板)のマッチングエンジンはニューヨークに拠点を置くdYdXトレーディング社が運営していました。
dYdXチェーンの導入により、取引板の管理を特定の企業に依存しなくなり、世界中のバリデーターがネットワークを支え、取引記録を共有し合いながらオンチェーンでマッチングを行うシステムに移行しました。これにより、完全な分散化を実現しています。
分散化は、しばしば、スケーラビリティを犠牲にしないと達成できないものとして捉えられます。しかし、dYdXチェーンは、カスタムしやすい独自チェーンをCosmos SDKを使うことにより、分散化しつつもスケーラビリティの高いチェーンを開発することに成功しました。具体的には、現時点で、dYdXチェーンは最大で1秒間に2000回の取引(TPS)を処理可能です。
さて、「ユーザーのユーザーによるユーザーのための取引所」と言いました。先述の通り、dYdXチェーンの取引板を管理するのは、バリデーター(そしてステーキングをするバリデーターを選ぶステーカー)です。具体的にはメモリ内にオーダーブック(すなわち、コンセンサスにコミットされないオフチェーンのオーダーブック)の記録を保存し、他のバリデーターに取引を「ゴシップ」し、コンセンサスプロセスを通じて新しいブロックを提案・生成します。
そして、既存の中央集権的な取引所(CEX)と大きな違いは、トレード手数料を運営企業が受け取らない点です。dYdXの場合は、バリデーター(そしてステーカー)が受け取ります。
出典:Mintscan「dYdXチェーンに参加するバリデーターの一部」