著者 Hisashi Oki dYdX Foundation Japan Lead

早大卒業後、欧州の大学院で政治哲学と経済哲学を学ぶ。その後、キー局のニューヨーク支局に報道ディレクターとして勤務し、2016年の大統領選ではラストベルト・中間層の没落・NAFTAなどをテーマに特集企画を世に送り込んだ。その後日本に帰国し、大手仮想通貨メディアの編集長を務めた。2020年12月に米国の大手仮想通貨取引所の日本法人の広報責任者に就任。2022年6月より現職。

7月30日に起きたCurve Financeハッキングの余波が続いている。Vyperというプログラミング言語の脆弱性をついた攻撃によって4つの流動性プールから7000万ドルほど流出した今回の事件。構造的なリスク要因が見られることから「DeFiにとってのリーマン・ブラザーズ」だという声も出ている。本稿では、Curveハッキングで起きた4つの論争について解説する。

① DeFiの相互依存関係が露呈された

Curveハッキングによって被害を被るのはCurveだけではない。CRVは構造的に重要な資産であり、他のDeFiにおけるトレードペアやプールの一部として使われている。また、レンディングプラットフォームのAaveにおいては証拠金として使われている。

さらに問題を複雑化さえているのは、CurveのCEOであるMichael Egorov氏が、8月1日時点でCurveの総供給量の47%に相当する4億2750万ドルを保有していたことだ。例えば同氏は、Aaveにおいて1億5800万Curveを担保に5400万ドルのUSDTを借りている。ハッキング事件以降Curveの価格は急落しており、同氏が強制的に清算される憂き目に合う可能性がある。

DeFiLlamaによると、CRVの証拠金の清算価格は27セント。CRVは一時50セントまで急落したが、現在は60セントに回復している。

既にMichael Egorov氏は負債を補填するためOTC取引を活発に行なっているようだ。例えば、ToronのJustin Sun氏やマーケットメイカーのWintermute、DWFなどがCRVを購入している。

また、Aave DAOにおいては、トレジャリーにある200万USDTを使って500万相当のCRVを購入する提案が出ている。DeFiがDeFiを支える動きとして注目だ。

② DeFiのリスクマネジメントは誰がやる?

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