芝犬が冠されたドージコインは2021年に高騰したことで、新たに注目が集まった。テスラCEOのイーロン・マスク氏のツイートなどによって、存在を新たに知った新規ユーザーの中には、ドージコインの初期にどのような物語があったのかを知らない人も多いだろう。マスク氏のツイートによって大きく価格に影響を受けているが、これまでにもドージコインは多くのイベントによって価格が動いてきている。

ドージコイン初期
ドージコインは2013年12月に、IBMソフトウェアエンジニアのビリー・マーカス氏とAdobeのエンジニアであるジャクソン・パーマー氏によって始まった。ドージコインのプロトコルは当初、仮想通貨ラッキーコイン(Luckycoin)をもとにして作成された。ラッキーコイン自体は、プルーフ・オブ・ワークにScryptという暗号化方式を使用するライトコインをベースに作られている。ラッキーコインはマイニングの報酬がランダムで決定されるという特徴をもち、実際にドージコインも2015年5月のアップデートまでランダムで報酬が設定されていた。
2013年のクリスマスにドージコインに初めて大規模なハッキングが起き、Dogewalletから数百万DOGEが盗まれた。当時の価格で12000ドル(約130万円)相当となり、全額がドージコイン財団の理事であるベン・ドーンベルグ氏によって返金された。
仮想通貨を使ってマイクロペイメント(少額決済)に力を入れたことがあるアルトコインやスタートアップの話を何度聞いたことがあるだろうか。ドージコインも例外ではなく、Dogetipbot(ドージチップボット)がレディットやTwitchでチップとして送金できる機能が開発された。2013年にレディット上で開始されたこのプロジェクトも2017年に運営側が破産し、Dogetipbotは停止。システムに保管されていたユーザーのコインは失われた。

Wolong
ドージコインの波乱万丈な起源に加え、当時レディットのグループで話題となった「Wolong」という偽名ユーザーがいる。2014年1月にドージコインのコミュニティはソチオリンピックに行く金銭的余裕がないジャマイカのボブスレーチームのために募金活動を始めた。この活動でドージコインのレートは急騰し、これに乗じて、Wolongはさらに価格操作を行なったとされている。
現在もWolongが価格操作を説明したPDFファイルが出回り、そこには自身の考え方や市場で価格を急騰させる方法などが書かれている。このように一人の人物によって簡単に価格操作された過去を持つ。

2014年10月にはアルトコイン取引所「Moolah」が閉鎖され、ドージコインに大きな価格調整が起こった。
被害を受けた投資家の中には750BTCを失ったものもいる。当時はドージコインを上場させていた取引所は少なく、Moolahが閉鎖された影響は大きかった。
Moolahの創業者であるアレックス・グリーン氏は多数のドージコインのミートアップやツイッタープロモーションを行なっていただけでなく、米国最大のモータースポーツ団体であるNASCARのスポンサーキャンペーンを管理もしていた。

しかし、この「アレックス・グリーン」という名前は、強姦などを含む複数の犯罪で11年の実刑判決を受けたライアン・ケネディ氏によって指名された偽名であったことがわかっている。
ドージコインはこれらの暗い歴史を持っているにも関わらず、今日では強力なオンラインコミュニティを形成した。ドージコインのレディットのサブフォーラムには現在、100万人以上が登録している。
ドージコインが始まった当時の暗い歴史は忘れ去られるかもしれない。しかし、イーロン・マスク氏がツイッターで発言するたびに価格が上下するという歴史はこれまでにも繰り返されてきているのだ。
翻訳・編集 コインテレグラフジャパン