著者:マイケル・アマー(Chain of Events共同創業者、v3ntureゼネラルパートナー)
1848年、ある男が貧困寸前で荒野に足を踏み入れ、泥と埃と数日分の汗にまみれたまま何百万ドルの富を手にして帰還した。19世紀半ばのカリフォルニアで金が発見されたことが引き金となり、米国経済を変貌させる巨大なうねりが生まれた。
そして2025年。今、世界を再び揺るがし、富の獲得競争を引き起こす新たな資源が登場している。それは見た目こそ輝かないが、同じくらい希少で、同じくらい価値があるもの──それがビットコイン(BTC)、すなわち「デジタル・ゴールド」だ。
今度のゴールドラッシュではツルハシではなく、ASICマシン、アルゴリズム、分散型台帳技術が用いられる。
かつてのゴールドラッシュが、銀行、金融システム、融資、取引、そして金融政策の転換を促したように、今、ビットコインと仮想通貨は、デジタル決済、資産のトークン化、そして政治領域の変化を引き起こしつつある。金に合わせて法や文化が変わったように、現在はビットコインに合わせて社会が変化している。
歴史的な類似点を探る
ゴールドラッシュは無から富を生みだした。ビットコインも同じことを成し遂げている。時価総額で約2兆ドルに達したビットコインは、初期にリスクを取った8万5000人をミリオネアに、そして17人をビリオネアに変えたと推定されている。
カリフォルニアに殺到した数十万人のうち、本当に金を掘り当てた者は、その富を鉄道や電信、町の建設に投じた。現代のビットコイン成功者たちは、その資金でアプリケーションを開発し、インフラビジネスを拡大し、業界全体の成長を後押しした。マイケル・セイラー氏はマイクロストラテジー(現ストラテジー)を創業し、同社は現在480億ドル以上のビットコインを保有する。チャンポン・ジャオ氏は世界最大の仮想通貨取引所バイナンスを築き、個人資産は570億ドル以上にのぼる。
当時の金採掘が労働者や投資家を呼び寄せたように、ビットコインは現在、機関投資家、新興企業、優秀な人材、政府、資本を引き寄せている。金本位制が世界経済を変えたように、米国の戦略的ビットコイン準備金も同じ影響を及ぼすだろうか。
初期の採掘者がツルハシを使っていたように、ビットコインの初期ユーザーは自宅のPCでマイニングしていた。今や高効率のマイニング施設、冷却装置、ライトニングネットワークといった高度な技術が主流になり、スケーラビリティと効率性は飛躍的に進化している。
国際金融への影響
富やインフラ形成、金融政策の変化を超えて、注目すべきは「金融主権」である。インフレや地政学リスクへのヘッジとしてビットコイン準備金を保有する国家は、まさに未来を自らの手に引き寄せようとしている。これは、長年にわたり金が準備資産として果たしてきた役割と同じだ。
1971年のニクソン・ショック以降、米ドルは金との兌換を停止した。今、新たな資源がその空席を埋める時が来ている。ビットコインは、経済の分散化を通じてインフレや政府の政策から個人を守る手段として、個人レベルの主権確立も後押ししている。
懐疑論への向き合い方
テック業界、リバタリアン、有名人、企業、そして一部の政治家らは、ビットコインへの熱意を示してきた。一方で規制当局、懐疑的な投資家、一流ファンドマネージャーたちは、FUD(恐怖・不確実性・疑念)の言説を繰り返してきた。「ビットコインには実体的価値がない」と言いながら、金という物質もまた「ただの光る岩」にすぎない。
ブラックロックのラリー・フィンクCEOもかつてはその1人だった。仮想通貨を「マネーロンダリングの指標」と呼んだ人物である。しかし現在は、世界最大の資産運用会社のトップとして、ビットコインの世界供給量の2.7%を購入し、「ビットコインは70万ドルに達する可能性がある」と語るまでに至っている。
フィンク氏が考えを改めたのなら、他の懐疑論者にも変化の余地はある。
トランプ氏は大統領選挙の前からビットコイン準備金構想に言及しており、現在もその路線を堅持している。州単位での準備金構築も進みつつあるようだ。
かつて金が世界を変えた。今、その役目はビットコインが引き継ごうとしている。黄金の役目を終わらせるために、ビットコインは現れたのだ。
本記事の見識や解釈は著者によるものであり、コインテレグラフの見解を反映するものとは限りません。この記事には投資助言や推奨事項は含まれていません。すべての投資や取引にはリスクが伴い、読者は自身でリサーチを行って決定してください。