米国のビットコインマイニング企業は、トランプ政権による関税の一時停止を好機と捉え、マイニングマシンの調達を加速させる構えだ。ただし、10%の最低関税は引き続き課されており、業界は依然として不利な立場にあると関係者は指摘している。
トランプ大統領は、各国に対する高関税措置を7月8日まで一時停止すると発表したが、中国を除く大半の国には最低10%の関税を維持している。中国に対しては関税率を145%にまで引き上げた。
ハッシュラボのヤラン・メレルドCEOはコインテレグラフに対し、「10%の関税は当初の案に比べれば軽いが、米国外の競合と比べると、米国のマイナーは依然として不利な立場にある」と語った。
「この最低関税が米国でのマイニングを不採算にするほどではないが、資本コストを確実に引き上げ、新規投資の長期的な持続可能性には影響する」と同氏は指摘している。
「今後の追加関税に備えて、短期的にマイニングマシンの輸入が急増することが予想される」とメレルド氏は付け加えた。
マイニング機器の価格はすでに上昇中
ルクソール・テクノロジーの最高執行責任者(COO)であるイーサン・ヴェラ氏もコインテレグラフに対し、すでにマイニング機器の価格上昇が始まっていると述べた。
「米国のマイナーは、今後90日以内にさらなる関税引き上げがある可能性を見越し、マシンの先行購入を進めている」とヴェラ氏は説明。また、米国内に陸揚げされた機器の価格や、国内組立契約のコストも上昇しているという。
4月2日に発表した「相互関税」では、タイ(36%)、インドネシア(32%)、マレーシア(24%)といった、世界有数のマイニング機器メーカーが拠点を構える国々に対する課税が発表された。
関税の不安定さが米国のマイニング業界に圧力
メレルド氏は4月8日のレポートにおいて、関税の一時停止が発表される前に、トランプ氏の関税が米国でのマイニング機器需要を急減させ、逆に海外のマイニング事業者が恩恵を受ける可能性があると警告していた。メーカー側が余剰在庫を安価に米国外へ販売する動きに出ると見られていたためだ。
今回の関税延期は米国のマイナーにとっては一時的な救済措置になるが、導入と撤回を繰り返す政策は、事業拡大を計画している企業にとっては深刻な不確実性を生んでいるとメレルド氏は指摘する。
「マイナーに必要なのは予測可能で安定したルールであり、数か月ごとに変わる政策ではない」と同氏は強調した。
ヴェラ氏も、こうした政策の揺れが「米国での成長に確実に悪影響を与える」と述べており、ルクソール社は今後の戦略を見直し、海外市場への進出も検討しているという。
「米国製ビットコイン」を掲げるトランプ氏
トランプ氏は大統領選挙キャンペーン中、「残りすべてのビットコインをメイド・イン・USAにしたい」と公言していた。
さらに先月末には、トランプ氏の家族の数名が、ビットコインマイニング企業ハット8と提携し、新たに「アメリカン・ビットコイン」というマイニング事業を立ち上げた。このプロジェクトは、戦略的準備金を備えた世界最大規模のビットコインマイニング企業の構築を目指している。
一方でヴェラ氏は、今回の関税が広範囲なものであることを認めた上で、仮想通貨マイニング業界はトランプ政権にとって「優先度の高い対象ではない」との見解を示した。
トランプ氏の関税政策は仮想通貨市場を含むほぼすべての市場を揺るがしている。コインゲッコーのデータによれば、記事執筆時点でビットコインの価格は8万555ドルとなっている。1月20日、トランプ氏がホワイトハウスに復帰したその日につけた過去最高値10万8786ドルと比べると、ビットコインは現在26%下落だ。