ブロックチェーン分析企業エリプティックは、ハマスがイスラエルに対する攻撃の資金源として仮想通貨の寄付を大量に受け取っている「証拠はない」と指摘している。

「ハマスが大量の仮想通貨寄付を受け取っているという主張を支持する証拠はない」とエリプティックは10月25日の分析で指摘してる。同社はさらに、集められた金額は「ごくわずか」であると付け加えた。

エリプティックのこの分析は、ウォール・ストリート・ジャーナルの記事や米国の議員らによる主張への反論として提示された。これらの記事では、仮想通貨が広くハマスの「テロ活動」の資金源として使われているとする主張が、データの誤った解釈に基づいていると同社は主張している。

エリプティックは例として、ハマス寄りのニュースメディアであるガザ・ナウが運営するハマスの仮想通貨募金キャンペーンを挙げ、10月7日のハマスによるイスラエル攻撃以降、わずか2万1000ドルしか集められていないと指摘した。

エリプティックによれば、この2万1000ドルのうち、9000ドルはステーブルコイン発行者テザーによって凍結され、さらに2000ドルは仮想通貨取引所に送られた後に凍結された。

エリプティックは、当初ハマスとパレスチナのイスラム聖戦が2021年8月から2023年6月までに仮想通貨で1億3000万ドル以上を調達したと主張するWSJの記事を訂正するためにWSJに連絡を取ったという。WSJは後に10月10日の更新で「最大9300万ドル」と修正した。WSJの記事は、エリザベス・ウォーレン上院議員をはじめとする100人近い米議員が10月17日にホワイトハウスと米財務省に送った書簡でも引用されている。

ウォーレン議員らは、仮想通貨が米国とその同盟国に対する「国家安全保障上の脅威」をもたらし、議会とバイデン政権が仮想通貨が不正行為を容易にするリスクを徹底的に対処するために「強力な行動」を取る必要があると主張した。

エリプティックは「過去2週間にわたり、政治家やジャーナリストはハマスやほかのテロ組織が仮想通貨で重要な資金調達をしているかのように描いたが、データはこれを裏付けていない」と強調している。

10月18日には、ブロックチェーン分析会社チェイナリシスも、メディアで流布されている誤解を解消しようとするブログを投稿した。メディアが注目した特定のウォレットは7ヶ月半で8200万ドルを受け取ったと報じられたが、チェイナリシスによれば、そのうち45万ドルだけが既知のテロ関連ウォレットに送金されたとのことだ。また、エリプティックは、2023年4月にハマスがビットコイン(BTC)を通じて行っていた仮想通貨募金活動を「寄付者の安全を考慮し、彼らに何らかの害を与えないため」に一時停止したとも指摘した。

2021年には、イスラエルの国家テロ資金対策局もハマスに関連する仮想通貨ウォレットに対する差し押さえ命令を出しており、ハマスが使用しているアカウントを凍結するために取引所と協力した。これらの事象は、仮想通貨がテロ資金調達の手段として理想的ではないことを示していると、エリプティックは主張した。

「これは仮想通貨がテロ資金調達ツールとしての弱点を示している。ブロックチェーンの透明性により、不正な資金の流れを追跡し、場合によっては実世界の身元と関連付けることが可能だ」とエリプティックは指摘する。

翻訳・編集 コインテレグラフジャパン