仮想通貨取引所コインベースがデリビットを29億ドルで買収したことは、仮想通貨業界における金融デリバティブの重要性が高まっていることを示していると業界関係者は指摘している。
5月8日、米国最大の取引量を誇る仮想通貨取引所コインベースは、仮想通貨デリバティブプラットフォームであるデリビットの買収を発表した。これは仮想通貨業界における史上最大規模の企業買収である。
この動きは、コインベース、クラーケン、ロビンフッドといった仮想通貨取引所やブローカー各社が、急成長中のデリバティブ市場の覇権を争う構図を反映している。
ビットコインスケーリングソリューション「フラクタル・ビットコイン」の共同創業者スペンサー・ヤン氏はコインテレグラフに対し、「グローバルなデリバティブ取引こそが、コインベースにとって成長の主要な原動力だ」と語った。
今回の買収により、コインベースは建玉(オープン・インタレスト)ベースで世界最大の仮想通貨デリバティブプラットフォームとなったと、同社は公式ブログで説明している。
ビットワイズのアルファ戦略責任者ジェフ・パーク氏は5月8日のX投稿で、「コインベースによるデリビット買収は、仮想通貨業界で見た中でも最高のバリューディールかもしれない」と述べ、「これはまさにコインベースによるクーデターだ」と評した。
米国の仮想通貨取引所クラーケンも、今年3月に先物ブローカーのニンジャトレーダーを15億ドルで買収する契約を結んでいる。
グローバル展開を加速
すでにコインベースは、1日あたり約100億ドルの取引高を誇る永久先物市場でグローバルなプレゼンスを確立しており、米国内でも20種類以上の先物契約を扱うデリバティブ取引プラットフォームを運営している。
デリビットは、オプション取引において世界最大の仮想通貨取引所であり、約300億ドルの建玉を抱えているとされる。
「この買収により、コインベースはあらゆる規制型および自己規制型のデリバティブ商品を網羅した」とヤン氏は指摘する。
今回の取引により、依然として取引高ベースで世界最大の仮想通貨取引所であるバイナンスが支配する市場において、コインベースのグローバル市場における存在感も強化された。なお、デリビットは米国居住者向けのサービスを提供していないと公式サイトには記載されている。
ヤン氏はまた、「デリビットはビットコインおよびイーサリアムのオプション取引において、グローバルトレーダーにとっての選択肢となっている」と述べた。
なお、先物契約は将来の特定日時に基礎資産を売買することを標準化した契約であり、レバレッジを活用してリターンを拡大する目的で利用されることが多い。一方、オプションは、基礎資産を一定価格で「買う権利(コール)」または「売る権利(プット)」を保有者に付与する契約だ。