サークルのステーブルコインであるUSDコイン(USDC)が2ヶ月で急成長している。

USDT、USDCの時価総額比率が過去最低を記録

注目すべきは、USDCの時価総額が5月以降8.27%増加し、7月2日に最高値の559億ドルに達したことだ。 一方、USDTは時価総額が19%以上落ち込み、現在661億4000万ドル前後を推移している。

USDT circulating market cap. Source: Messari

両者の時価総額の差が小さくなっていることは、USDCがUSDTのステーブルコイン分野での覇権に最も近づいたと言える。

USDTとUSDCの時価総額比は、2020年8月には「9」を超えていた。しかし、7月には下表のように過去最低の「1.20」まで低下した。

USDT to USDC market cap ratio. Source: TradingView

現在2つのステーブルコインの差は100億ドル以下であるため、数週間とは言わないまでも、数か月後には時価総額でUSDCがUSDTを上回る可能性がある。

一方でUSDCはイーサリアムのブロックチェーン上の「リアルボリューム」に関しては、すでにUSDTを追い抜いている。

USDTは疑念を乗り越えるか

仮想通貨投資家は、5月にアルゴリズム型ステーブルコインであるテラ(現テラクラシック)が崩壊して以来、USDTに同じことが起こるのではないかと懸念し、慎重になっている。それは主に、テザーのUSDTトークンが現金や他の伝統的な資産に100%裏付けられていないという憶測によるものだ。

その結果、空売り勢はUSDTが間もなく1ドル台を割り込む可能性に賭け始めている。ウォールストリートジャーナルによると、これらの弱気ポジションが「数億ドル」の価値になる可能性があると報じている。

これらの主張は、テザー社に「取り付け騒ぎ」が起き、すべてのUSDTを1ドルに換金できなくなることを想定している。その結果、人々はテザーを割引価格で売り始め、ドルペッグを破壊することになるというものだ。

USDTは、極端な市場の変動時に1ドルペグを下回ったり上回ったりした歴史があるが、これは初期の頃に顕著だった。

例えば、2018年10月には、姉妹会社の1つ(仮想通貨取引所ビットフィネックス)が債務超過であるという噂の中で、トークンの価値は仮想通貨取引所クラーケンで0.85ドルまで下落した。

USDT price chart since 2015. Source: CoinMarketCap

5月のテラ崩壊後も同様で、USDTの価値は一時的に0.97ドルまで急落した。それでも、テザーはその都度ドルペッグを回復してきた。

一方、USDコインは2018年のローンチ以来、0.99~1ドルを下回ったのは2回だけだ。2020年3月の「COVID-19暴落」時に0.97ドルまで下落したが、1ドルまで回復し、同月に0.98ドルまで再び下落した。

USDC price chart since 2019. Source: CoinMarketCap

仮想通貨投資家がUSDCへの信頼を強めたのは、主にサークルがFinCENをはじめとする米国46州の規制当局に登録されたマネーサービス事業者として機能しているためだ。そのため、送金の法律に沿って当局に引当金を報告している。

また、サークルは、世界有数の会計事務所であるグラント・ソントンの監査を受けていることも大きいだろう。

テザー社の最高技術責任者であるパオロ・アードイノ氏は、6月に「トップ12の会計事務所のいずれかによって準備金を完全に監査してもらう」とコメントしている。今のところ、会計会社のMHAが四半期ごとにテザー社の準備金の証明書を提供している。