中国は、デジタル人民元(e-CNY)とも呼ばれる中央銀行デジタル通貨(CBDC)に関して、一帯一路構想やクロスボーダー取引での利用を拡大している。デジタル人民元は、最初に開発され広くテストされたCBDCの1つだ。公式な発表はないものの、政府は複数の都市や何百万人もの市民を対象にテスト範囲を拡大している。

中国の徐州市では、デジタル人民元をクロスボーダー取引で利用する計画が発表された。徐州市は、中国からヨーロッパへ向かう多くの貨物列車の出発点であり、サウス・チャイナ・モーニングポストによると、アジアとヨーロッパの21カ国と18の定期的な越境鉄道接続がある。

徐州市は交易の要所で、越境列車で運ばれる貨物のサービスや保管料金の支払いにデジタル人民元を利用することを促進している。今後、徐州市内での税金や公共料金の支払いにもデジタル人民元の利用範囲を広げる。

江蘇省は特に、デジタル人民元の利用促進に積極的だ。同省内のもう一つの都市、常熟市は、デジタル人民元で公務員や公共機関で働く人々に給与を支払うと発表した。

香港金融管理局は、徐州市以外にも、広東・香港・マカオ大湾区がデジタル人民元を用いたクロスボーダー決済の試験場になると発表した。

香港金融管理局副CEOのダリル・チャン氏は、「香港では、中国人民銀行と共同でデジタル人民元をクロスボーダー決済ツールとしてテストしている」と述べた。また、チャン氏は、香港金融管理局、中国、および他の2カ国が、タイとアラブ首長国連邦を含むクロスボーダープロジェクトを検討しており、「クロスボーダー取引の効率を向上させ、コストを削減する」とした。

中国政府は、国際貿易市場が米ドルから離れつつある時期に、CBDCの取り組みを強化している。最近では、中国はロシアやインドといった国々と、米ドルを超える国内通貨に基づいた複数の貿易協定を締結している。