インド財務省が仮想通貨(暗号資産)の禁止を検討しているとの報道は、インドの仮想通貨コミュニティをパニックに陥れた。昨年7月に作成された仮想通貨の全面禁止とする規制案と、その中で提案された最大懲役10年の罰則という懸念が再び持ち上がったからだ。

こうした懸念に対し、コインテレグラフのインタビューでインドの仮想通貨取引所コインスイッチの創業者兼CEOのアシシュ・シンガル氏は、政府がデジタル通貨を全面禁止とする可能性は2019年に比べてかなり低下していると明かした。

シンガル氏は法案が提出された2019年は、中銀であるインド準備銀行(RBI)が仮想通貨を支持していなかったことが禁止の可能性を高めていたと指摘。さらに仮想通貨取引所へのの銀行口座サービスが禁止とされていたことがこうした可能性に拍車をかけていたという。

しかし、今年は状況が変わっている。

3月に最高裁がRBIの銀行口座サービス禁止を「違憲」としたことや、RBI自身からも金融機関が仮想通貨関連事業体にサービス提供を禁止していないことを明言。シンガル氏はインドにおける仮想通貨への認識に変化が起きていると話す。

「今のところ、財務省の禁止案が通る可能性は低いだおる。政府の中には仮想通貨を完全に禁止するのではなく、正しいステップを歩もうと考える賢い人たちがいる」

ユーザー保護と業界成長のために規制必要

シンガル氏は、政府が仮想通貨業界に懐疑的な姿勢を示し続けているのは詐欺や盗難が起こっていることが理由だと指摘する。このため、政府が業界により良いルールや政策を導入し、ユーザー保護を強化することが最終的な目標だという。

シンガル氏は、仮想通貨の禁止は規制を整備するより確実に簡単な手法ではあると指摘。しかしこれは、合法的な活動を抑制するだけで、違法ビジネスは継続することになると話した。

そのため、適切な規制は、仮想通貨やブロックチェーンビジネスの合法的な側面に大きな利益をもたらすために適切な規制が必要になると考えている。

政府はステップバイステップのアプローチを

現在のところ、ブロックチェーンと仮想通貨産業はインド経済への影響は少ない。そのため、仮想通貨を禁止しても経済に影響が出るわけではない。

しかし、シンガル氏は、仮想通貨業界は活況を呈している産業であり、全面禁止などの措置は長期的に見ると、外国からの投資や雇用の機会が大きく失われる可能性があるという。

そのため、政府は、まずユーザーと資金の安全性を確保し、次に証券やユーティリティ、トークンを定義し、ユーザーを正しい方向に誘導するというステップバイステップのアプローチを取らなければならないと述べている。

「これには時間がかかるだろう。1つの規制や1つの法案ですべてが変わるわけではない。」

翻訳・編集 コインテレグラフジャパン