ボリンジャーバンドは、株式投資で使われるテクニカル指標だ。現在の株価水準が高いか安いかを客観的に判断できる。
ボリンジャーバンドを活用すれば、株の取引タイミングやトレンドの転換点を見極めやすくなる。シンプルでわかりやすい指標なので、初心者でも比較的簡単に活用できるだろう。
今回はボリンジャーバンドの概要や使い方、取引タイミングの具体例について解説する。
ボリンジャーバンドとは
ボリンジャーバンドとは、アメリカの投資家ジョン・ボリンジャーが考案したテクニカル指標だ。統計学をもとに作られており、現在の株価水準を判断する際に使われる。
ボリンジャーバンドは、移動平均線と標準偏差(σ:シグマ)で構成されている。一般的には、株価が±2σのラインを超えると買われすぎ、売られすぎだと判断できる。
出所:SBI証券 日経平均株価のチャートより作成
標準偏差とは
標準偏差(σ:シグマ)とは、リターンのバラつきを統計的に表したものだ。金融商品のリスクは、リターンの標準偏差を使って示すことができる。標準偏差の数値が高いほど、リスク(価格変動)は大きくなる。
ボリンジャーバンドでは、1標準偏差を±1~3倍して「±1~3σ」のラインを表示する。プラスは移動平均線から株価が上昇する範囲、マイナスは株価が下落する範囲のことだ。正規分布の理論によると、株価は以下の確率でバンド内に収まると言われている。
- 株価が±1σの範囲内に収まる確率:約68%
- 株価が±2σの範囲内に収まる確率:約95%
- 株価が±3σの範囲内に収まる確率:約99%
ボリンジャーバンドの見方・使い方
ボリンジャーバンドを見るときは、主に±2σが使われる。株価は高い確率で±2σの範囲に収まると予測できるからだ。
株価が±2σに収まる確率は約95%であるため、±2σを超えるのは例外と考えられる。一般的には、株価が+2σを超えて上昇したら買われすぎ、-2σを超えて下落したら売られすぎと判断できる。
ボリンジャーバンドの具体的な使い方は以下の通りだ。
逆張りでの使い方(主にもみ合い局面)
逆張りとは、株価が下がったところで買いを入れる手法だ。ボリンジャーバンドを逆張りで使う場合は+2σを上値抵抗線、-2σを下値支持線と考える。株価が-2σを下回ったら買いタイミング、+2σを上回ったら売りタイミングだ。
ボリンジャーバンドを逆張りで活用するなら、一定の値幅で上下を繰り返すもみ合い局面(レンジ相場)に向いている。株価と±2σのラインに注目するだけで売買タイミングを判断できるので、初心者でも実践しやすいだろう。
順張りでの使い方
順張りとは、株価が上がっているときに買いを入れる手法だ。
ボリンジャーバンドは、株価があまり動かないときは幅が狭まり、値動きが大きくなると幅が広くなる。バンドの幅が狭くなったところで株価が+2σを上回ると、上昇トレンドへの転換サインとなる。
バンドの幅に注目し、株価が+2σを超えたタイミングで買いを入れることで、上昇トレンドをうまく捉えられる可能性がある。
出所:SBI証券 日経平均株価のチャートより作成
ボリンジャーバンドを使った取引タイミング
ここでは、実際の株価チャートを使いながら、ボリンジャーバンドを活用した取引タイミングの具体例を紹介する。
買いタイミングの具体例
まずは逆張りでの活用方法を確認しよう。以下はトヨタ自動車(7203)の株価チャート(日足、3ヵ月)だ。
出所:マネックス証券 トヨタ自動車の株価チャートより作成
値動きが小さく、バンドの幅が小さい状況が続いていたが、その後株価が大きく下落している。このケースでは、株価が-2σのラインを下回ったところが買いタイミングだ。
ただし、更なる株価下落が心配な場合は、株価が上昇に転じたことを確認してから買いを入れてもいいだろう。
続いて、順張りでの活用方法を見てみよう。以下は日経平均株価のチャート(日足、3ヵ月)だ。
出所:マネックス証券 日経平均株価のチャートより作成
値動きが小さく、バンドの幅が狭い状況が続いていた。株価がやや上昇して+2σのラインを超えたところが買いタイミングだ。この後株価は上昇トレンドへ転換し、バンドの幅も広くなっているのがわかる。
ボリンジャーバンドは「株価が+2σを超えたら売り(買われすぎ)」と判断するのが一般的だ。しかし、今回のように上昇トレンドへの転換点となることもある。
売りタイミングの具体例
次に、売りタイミングの具体例を確認しよう。以下は、買いタイミングのところでも確認したトヨタ自動車の株価チャートだ。
出所:マネックス証券 トヨタ自動車の株価チャートより作成
株価が-2σを下回ったところで買いを入れたとすると、株価が上昇に転じて+2σを上回ったところ(売り①)が売りタイミングだ。このタイミングを逃した場合は、次に+2σを上回るところ(売り②)が売りタイミングとなる。
買いを入れた後に上昇トレンドが続く場合、売りタイミングを判断するのは難しいのではないだろうか。売りが早すぎると利益が小さくなり、遅すぎると株価が急落して損失が生じる恐れもある。
ボリンジャーバンドを活用して「+2σを上回ったら売る」と決めておけば、初心者でも売りタイミングを判断しやすくなるだろう。
ボリンジャーバンドを活用する際の注意点
相場によってはうまく機能しない
ボリンジャーバンドは統計学に基づく指標であるため、株価水準を客観的に判断できるのがメリットだ。しかし、相場によってはうまく機能せず、売買タイミングを判断するのが難しいケースもある。
たとえば、相場が上昇(下落)トレンドにあると、株価が±2σと±1σの間で上下を繰り返しながら上昇(下落)していくことがある。この状態を「バンドウォーク」という。
出所:SBI証券 東北電力の株価チャートより作成
バンドウォークが発生すると、現在の株価が買われすぎか、売られすぎかを判断するのが難しくなるので注意が必要だ。
逆張りの場合は損切りラインを決めておく
ボリンジャーバンドは、逆張りの手法として活用されることが多い。しかし、株価が-2σを下回って売られすぎだと思っても、買いを入れるとさらに株価が下落することもある。
予測が外れたときに備えて、買いを入れる前に損切りラインを決めておくことが大切だ。損切りを徹底すれば、予想が外れても損失を最小限に抑えられる。
ただし、逆張りは経験者向けの手法であり、初心者は順張りで取引するのが基本だ。株価が-2σラインを下回ってすぐに買うのではなく、株価が上昇に転じたことを確認してから買いを入れるほうが損失を回避しやすいだろう。
ボリンジャーバンドでも初心者は順張りがおすすめ
ボリンジャーバンドは現在の株価が買われすぎか、売られすぎかを確率で判断できる便利な指標だ。初心者でも活用しやすいが、相場によってはうまく機能しないこともある。ボリンジャーバンドは万能ではないので、他のテクニカル指標と併用して売買タイミングを判断しよう。
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