現地の専門家や政府職員らを招いて開かれたサプライチェーンに関するフォーラムで、17億ドルもの損害を毎年オーストラリアの第一次産業にもたらしている食品偽装に対し、ブロックチェーン技術を活用して対策を講じることが提唱された。

ブロックチェーン・オーストラリアの副会長であるロブ・アレン氏が9月4日に開かれたオンラインでのパネルディスカッションの司会を務めた。そこでは150人を超える参加者から成る観客へと向けて、サプライチェーンの部門におけるブロックチェーンのユースケースについて話し合われた。

アレン氏は状況説明として、国内および海外の市場においてオーストラリア産であると主張する農産物が本物であることを証明することが、オーストラリアの農産業が直面する非常に大きな課題となっていることを述べた。

オーストラリアは農産物の主要な輸出国であり、ブロックチェーン技術を使用することによって、毎年オーストラリアで少なくとも17億ドルの損害をもたらす食品およびワインの偽装に対して、生産地を明らかにするソリューションを提供することができると、国家ブロックチェーンロードマップのリーダーである産業省のクロエ・ホワイト氏は説明した。

この問題はオーストラリアに留まるものではないと、アグテック・キャピタルの社長を務めるアル・フラートン氏は話した。フラートン氏の経験によれば、東南アジア全域においても食品偽装、不当表示、原産地のトレーサビリティなどは現実の問題となっているという。

オーストラリア産であるとされる輸出品を受け取る人はその品を高品質なものだと思うが、その品質を落とすための策が最終顧客に届く前に使われている可能性があるとフラートン氏は述べた。こうした策によって、オーストラリア産の水を詰めていたボトルが最大で7回にもわたって中身を詰め替えて中国全土で再販売されたり、油が「裏口から密輸業者たち」へと売られ、水増しされたうえで再販売されている可能性があるという。

ブロックチェーンを使えば、商品が本物であることを証明するのに役立つデータの透明性と信頼性を高めることができるとフラートン氏は主張した。

食品および農産物の認証を行う産業は現在、簡単に偽造できる紙の証明書に大きく依存している。ブロックチェーンによるソリューションなら、こうした産業にも多大な利益と効率性をもたらすこともできると、農業のブロックチェーンプラットフォームであるジオラのブライディ・オールソンCEOが説明した。

多くの企業が食品と農産物の証明書を得るために甚大かつコストのかかる努力を行っているが、それで得られるものはインクで印字された価値のない紙切れのみであるとオールソン氏は述べた。ブロックチェーンの技術を使えば、こうした証明書はデジタルに保存することが可能となり、偽造に対する耐性が大幅に向上され、それからその価値も高まるという。

技術的なリテラシーの欠如がより広範なブロックチェーンの採用に対する最も大きな障壁となっているとパネルでは結論が出された。結論に際し、シビック・レジャーのカトリーナ・ドナヒーCEOは、ほとんどの人がブロックチェーン技術の理解には苦労していると説明し、オーストラリア国民の技術リテラシーを高めることを目的とした教育的な取り組みを行うことを提唱した。

また、パネルではオーストラリアで初となるブロックチェーンに焦点を当てた共同研究センター(CRC)のための計画が発表された。CRCはオーストラリアのスタートアップ企業を通してブロックチェーン採用の推進を行うために使うとして、6000万ドルを調達している。そのうち2500万ドルはオーストラリア政府から提供されている。

CRCは21年の10月に創設される予定である。

翻訳・編集 コインテレグラフジャパン