イーサリアムの成長を支えるためのスケーラビリティ問題の解決を目指して「イーサリアム2.0」が早ければ今年7月に立ち上がる。

過去数年間、延長に次ぐ延長を重ねているイーサリアム2.0計画。新たなアルゴリズム「プルーフオブステーク(PoS)」の導入が計画されることもあり、一部の業界関係者からは大きな期待が寄せられている。しかし、ビットメックスは、5月4日付のレポートの中で、「言われているほど立ち上げイベント自体はそこまで大きなインパクトを残せないかもしれない」と分析した。

ビットメックスによると、イーサリアム2.0は最初は「ほぼPoSシステムのテストネットワークとして機能する」と予想。ほとんどの経済活動やスマートコントラクト機能はオリジナルのイーサリアム1.0に残るだろうと述べた。

シャーディングと相性悪い?

イーサリアム2.0では、イーサリアムのネットワークのセキュリティや分散型の性質を毀損することなくスケーラビリティ問題改善するためシャーディングと呼ばれる仕掛けがある。ビットメックスはシャーディングという選択肢を採用をしたがためにイーサリアムの新たなネットワークへの移行はかなり複雑な作業を要するものになり、数年の月日を要するだろうと予想した。

「既存のスマートコントラクトを単純にシャード(コンピューター)に移すことはできない。新たなネットワークが構築される必要があり、スマートコンタクトは新たな環境に適用するように再び作り直される必要がある。この移行過程は辛いプロセスになり、数年を要するだろう」

さらにビットメックスは、そもそもシャーディングとイーサリアムは「正反対」の性質を持っていると主張した。

「もしイーサリアムが止めることのできない1つのワールドコンピューターなら、複数のシャード(複数のコンピューター)に分割されることによりユーザーの期待に応えられなくなるかもしれない。シャード1にあるスマートコントラクトがシャード2にある別のスマートコントラクトと交流する時、双方がシャード間で共有する情報やイベントに合意する必要があるため、大きな軋轢が生まれるかもしれない」

イーサリアム2.0では、すべてのシャードは完全なPoSシステムとして機能し、それぞれが独立して取引の履歴を管理。それぞれのノード(ネットワークに参加するコンピューター)が全ての取引を承認するのではなく、特定のシャード用に取引を承認することになる。

イーサリアム2.0の価格への影響は?

PoSのネットワークでは、資産保有者がネットワークの承認用に仮想通貨を保有することで報酬を受ける仕組みだ。イーサリアム2.0では32イーサ(ETH)を保有していればバリデーターとして参加できる。

ビットメックスは、イーサリアム2.0の価格への影響について、短期では多くのETHがステーキング用にロックされることが見込まれるため、「マーケットのETH供給量が制限されて価格の押し上げ効果を生む」と予想した。

ただ「本当の問題」は「イーサリアムが長期的な価値をもたらすかであり、供給量が制限されるだけではなく、本質的な需要が生まれる必要がある」と述べた。