仮想通貨デリバティブ取引所のビットメックスは、米国商品先物取引委員会(CFTC)と金融犯罪取締ネットワーク(FinCEN)からの訴訟を解決するために、最大で1億ドルを支払うことに合意した。

CFTCの発表によると、ニューヨーク南部地区連邦地方裁判所は、HDRグローバル・トレーディング・リミテッド(HDR Global Trading Limited)、100xホールディング・リミテッド(100x Holding Limited)、ABSグローバル・トレーディング・リミテッド(ABS Global Trading Limited)、シャイン・エフォートIncリミテッド(Shine Effort Inc Limited)、HDRグローバル・サービス・リミテッド(HDR Global Services Limited)が、BitMEXプラットフォームを違法に運営していたことに対して同意審決を下した。

「ビットメックスは、電子メールアドレスのみを収集し、顧客の身元確認を怠るなど、適切な顧客のデューデリジェンスを行わずに、顧客が自社のプラットフォームにアクセスし、デリバティブ取引を行うことを許可していた」とFinCENは指摘。さらに「自社のプラットフォームが米国人との取引を行っていないと公言していたにもかかわらず、仮想プライベートネットワークを使用して取引プラットフォームにアクセスし、インターネットプロトコル監視を回避する顧客をスクリーニングするための適切なポリシー、手順、内部統制を実施していなかった」ことを問題視した。

CFTCおよびFinCENの双方との和解の一環として、ビットメックス側は、「仮想通貨取引プラットフォームの違法な運営とアンチマネーロンダリング違反」により、1億ドルの罰金を支払う。また、同社は、疑わしい活動の報告を適切に行っていなかったかどうかを判断するために、独立したコンサルタントを雇い、取引の履歴分析を行うことが求められる。

FinCENによると、ビットメックスは適切なマネーロンダリング防止策を維持せず、6年以上にわたって588件の疑わしい活動を政府機関に報告していなかった。FinCENは、同取引所が「既知のダークネット市場またはミキシングサービスを提供する未登録のマネーサービス事業者」との間で、少なくとも2億900万ドルの取引を行ったと主張している。

CFTCのロスティン・ベーナム委員長代理は、「今回の事件は、デジタルアセット業界が、より多くの市場参加者に接していく中で、金融業界における責任と、コンプライアンス文化を醸成し遵守する義務を真剣に受け止めるように促すものだ。CFTCは、CFTCの管轄市場に影響を与える行為が、顧客や消費者保護の観点から懸念される場合、迅速に対応する」と述べた。

CFTCの発表によると、今回の和解は、ビットメックス元CEOのアーサー・ヘイズ氏をはじめとする同社幹部に対する訴訟に起因するもので、ヘイズ氏らは、銀行機密法違反の疑いで告発される可能性がある。ヘイズ氏の代理人によると、ヘイズ氏やベン・デロ氏、サム・リード氏の3人は、今回のCFTCとFinCENの和解には含まれない。ヘイズ氏は、4月に米当局に自首して以来、1000万ドルの保釈金で自由の身となっており、一部の元幹部の裁判は2022年3月に開始される予定だ。

2020年10月に初めて告発された後、ビットメックスはアンチマネーロンダリングと取引監視プロトコルを強化する計画を発表した。1月の時点で、同取引所は顧客確認機能を改善したとし、確認されていないアカウントが保有していた以前のオープンポジションはすべてクローズしたと報告している。