ステーブルコインのテザー(USDT)は、18ヶ月以上にわたって仮想通貨(暗号資産)の主要なベースペアとなっている。

これはニューヨーク州司法長官との進行中の訴訟や、テザーが十分な米ドルの裏付けがないという疑惑などを考えると、かなり印象的な偉業だと言えるだろう。

中国では2017年に仮想通貨取引所が禁止されたにもかかわらず、USDTが支配的なステーブルコインとなっている。これは、バイナンスやフォビ、OKExなどの大手取引所が主要なベースペアとしてステーブルコインに目を向けたためだ。

またUSDコイン(USDC)やトゥルーUSD(TUSD)、パクソススタンダード(PAX)などの競合他社の時価総額は2019年6月時点で5億2000万ドルだったが、同じタイミングでUSDTはすでに31億ドルを超えていた。

過去15ヶ月間で、テザーの時価総額は157億ドルにまで増加したが、競合ステーブルコイン4社は計41億ドルになっている。米ドルの裏付けを巡る論争をものともせず、テザーは法定通貨を裏付けとするステーブルコインで80%のシェアを維持している。

また取引高についてもテザーは75%のシェアを占めており、同じことが言える。

Consolidated crypto volume by base pair

ペアごとにまとめた仮想通貨取引高  出典: CryptoCompare

クリプトコンペアのデータは、USDTが過去3ヶ月間で取引高のシェアで73%近くを維持していることを示している(もちろんこういったデータは一部の取引所が除外されていたり、データプロバイダーごとに異なることには注意が必要だが)。

クリプトコンペアのリサーチ責任者であるコンスタンティン・ツゥサビリス氏は、「ビットコインをUSDTまたはUSDCやPAXなどのほかのステーブルコインとの取引高に関しては、大きな変化は見られなかった」と述べている。

ステーブルコインとBTC価格の関係

ほとんどのトレーダーは、仮想通貨への主要なゲートウェイとしてビットコイン(BTC)を使用することに慣れている。このソリューションは、2017年もしくは18年にほとんどのトレーダーにとって唯一、または少なくとも最も流動性が高かったものだ。しかしステーブルコイン市場が成長するにつれて、USDTとペアになったアルトコインの量が急増した。

アルトコインとのペアが幅広く提供されたことは、ステーブルコインの量の増加に続き、コインベースやフォビ、バイナンスが独自のステーブルコインをローンチするにつれて、さらに加速することになった。

仮想通貨の主要ランプ(出入口)として、ビットコインの使用数が減少したことがその価格に悪影響を与えたと考えるのは間違っている。パススルーとしてBTCを取得した人は、その取引高を増やしたかもしれないが、後でアルトコインと引き換えに同じ量を売っていたわけであるからだ。

さらに、主要なオンランプソリューションとしてステーブルコインを使用したとしても、最終的には、このフローの一部がビットコインに流入する。さらに、ほとんどの仮想通貨は、価値や希少性の面で、BTCの直接の競合相手とはなるわけではない。

Chainlink inflow and outflow past 24 hours

24時間でのチェインリンクの流入と流出  出典: Coinlib.io

たとえば、上のグラフは、過去24時間にチェインリンク(LINK)からBTCへの2660万ドルの流入をしめしている。残りのアルトコインでも同様の傾向がみられる。ステーブルコインが主要なペアとしての地位を確立したことで、ビットコインが取引高を失っていないことがわかる。

統合された仮想通貨市場の取引高を分析することにより、ステーブルコインが全体的な市場シェアを増加させているのか、それとも単にビットコインから市場を奪っているのかを判断することができる。

Crypto total market 7-day average volume, USD billion

仮想通貨市場の平均取引高(単位:十億ドル). 出典: TradingView

上のチャートは、2017年後半のバブルを経験したトレーダーにとってもおそらく驚くべきものだろう。2018年1月の1日平均366億ドルという数字は、当時では過剰なものだったかもしれないが、現在の1000億ドルのレベルと比較すればささやかなものだ。

水増しされた取引高の影響を考量したとしても、かなりの増加があったことがわかる。このボリュームの増加は、2019年6月に36億ドルだったステーブルコインが189億ドルまでぞうかしたのと一致している。

取引高のドミナンスが重要な要素に

マイクロストラテジーの共同創設者兼CEOのマイケル・セイラー氏は、BTCの主な用途は準備通貨であると考えている。したがって、イーサリアム(ETH)やステーブルコインなどのトークンとは競合しないことになる。

時価総額に基づく従来のビットコインのドミナンスのデータとは異なり、セイラー氏の分析にはプルーフ・オブ・ワークのメカニズムに基づくコインのみが含まれている。

ビットコインの取引高がより広い資産ベースと比較しても、上位20くらいのアルトコインの合計と一致している。

30-day accumulated transparent volume, USD

 出典: Nomics

上記のデータを念頭において、ステーブルコインの時価総額や取引高においてビットコインの競合相手ではないと言ってもいいだろう。

クリプトコンペアのリサーチ責任者は次のように述べている。

「過去数か月の上位のアルトコインについては、取引高が必ずしもBTC市場から離れているわけではない。むしろ、USDT市場と連携して提供され、利用されている。USDT市場は、一般的にBTC市場と比較して優れた流動性を提供するため、ほとんどの取引所にとって魅力的だ」

翻訳・編集 コインテレグラフジャパン

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