3月4日に開かれた金融庁の金融審議会総会で参加メンバーから「もうビットコインを仮想通貨と呼ぶに当たらない」という発言が出ていたことが、議事録から明らかになった

「第41回金融審議会総会・第29回金融分科会合同会合」で金融庁は、昨年に開催した「仮想通貨交換業等に関する研究会」でまとめられた報告書を説明。「暗号資産への呼称変更」など報告書の内容に沿った金融商品取引法と資金決済法の改正案が閣議決定された

総会で京都大学公共政策大学院の岩下直行教授は、もともと通貨という呼び名が浸透し始めたきっかけは2013年のキプロス危機だったと指摘。キプロスはタックスヘイブン(租税回避地)としてロシア人の富裕層などに重宝されていたが、当時、危機による預金封鎖から預金の引き出しや送金ができなくなった。こうした状況の中でビットコインは本領を発揮。資産をビットコインに変える資産家が続出し、ビットコインの急騰につながった。

岩下教授は、キプロス危機の時のビットコイン高騰について「パンドラの箱を開けたような」と表現し、次のように続けた。

「ビットコインは、単に、何だかよくわからないけれども値上がりするもので、資産なのだということではなくて、どうもここには何か通貨として使われているという1つのイリュージョンがあって、結果として値上がりしたという、そういう実態がどうもあるような気がする」

岩下教授は、ビットコインは価格が乱高下した結果、通貨ではなくなったと主張。価格が比較的安定した時期には、マネーロンダリングなど違法なことを含めて国際取引ができていたが、その後、価格が乱高下した結果「ビットコインを仮想通貨と呼ぶに当たらない」と述べた。

ただ「それに当たるようなものが今後出てこないかというと、決してそんなことはない」と付け加えた。

暗号資産への呼称変更についても「通貨という単語が抜けるということについては、私もまだ慣れないのですけれども、努めて暗号資産という言葉を使おうとしている」と述べた。

キプロス危機の時にビットコインが高騰した要因としては、決済(交換)手段というよりは避難通貨としての仮想通貨、つまり価値保存手段としての通貨の役割が機能したという見方がある