ビットコイン(BTC)は2019年に3倍以上も上昇した。年初は4000ドル付近で推移していたが、6月には1万4000ドルを若干下回る水準まで上昇した。「エイプリルフールの上昇」とともに今年のビットコインの強気相場が始まる一方、ほとんどのアルトコインはつまづいている。
果たして今後アルトコインの復活はあるのか?
一部のアナリストはビットコインのドミナンスが引き続き増加する中でアルトコインはますます苦境に立たされると考える。一方で、ビットコインの強気相場に「疲れ」が見え始めた時、アルトコインが上昇するのは以前にも見られた現象と指摘するアナリストもいる。
ビットコインのドミナンス 時価総額全体に占める割合
アルトコインの季節が戻るかどうか見方が分かれる中、現在の強気相場がまだ生まれたてのマーケットにとって大きな影響を与えていることは確かだろう。複数のコメンテーターが、仮想通貨は成熟した資産クラスになりつつあり、さらなる普及が期待できるとみている。
ビットコイン対アルトコイン
2017年末、ビットコインが2万ドルをつける一方、アルトコインも過去最高値を記録した。翌年、多くの仮想通貨は急落して仮想通貨は長い冬の時代に突入。平均の下落率は80%以上だった。
2017年について多くのアナリストが出した結論は、誇大広告に乗せられた仮想通貨マニアが買いに走り、個人投資家はFOMO(取り残されることへの恐怖)から「次のビットコイン」の初期の支持者になろうと多額のマネーをつぎ込んだというものだ。
また2017年は、このFOMOが基盤となった誇大広告にイニシャル・コイン・オファリング(ICO)のブームも合わさった。そしてICOブームがアルトコイン市場にも活気をもたらした。
2018年、ビットコインとアルトコインは、同じくらい下落した。
2019年の回復の恩恵は、平等に分配されていない。
より具体的にビッコイントとアルトコインの関係を知るために、仮想通貨アナリストのStopAndDecryptoによる比較を見てみよう。
- ビットコインキャッシュのハードフォーク(2018年11月)以降、ビットコインキャッシュ(BCH)は11%下落する一方、ビットコイン(BTC)は270%以上も上昇した。
- ビットコインSV(BSV)は、2018年のビットコインコインキャッシュのハッシュ戦争以降、40%以上も急落した。
- ビットコイン(BTC)が2017年のハードフォーク以降でほぼ3倍になったのに対して、イーサリアム(ETH)はその期間でほぼ0%成長だった
- アルトコインは、ピークから80%以上急落した。
ビットコインのドミナンスを測る方法は他にもある。ビットコインの価格をベースに、ある特定の期間、アルトコインのパフォーマンスを測る方法だ。
例えば、イーサリアムとビットコインのペアであるETH/BTCは、過去最低の数字まで下落している。
(出典: tradingview.com)
ブロックストリーム社の開発者であるグルーブルズ氏は、アルトコインの価値命題を痛烈に批判した。
アルトコインの季節は、線香花火のように儚い成功だった。ビットコインのマイナーがプロトコルのアップグレードを延期し、アルトコインのマイニングから巨額利益を得ることによって生み出された。我々は今2013年に戻りつつある。アルトコインがBBQコインやPPコインのように使えない悪い冗談だった時に。
アルトコイン市場で変化の兆し
2019年も前半が終わったが、2017年に巨額の資金調達をしたICOプロジェクトからのアップデートはほとんどなかった。以下のようなことが考えられる。
- 2017年の誇大広告に乗って、ブロックチェーン基盤のインフラを構築して特定の問題解決を約束した。それはリアルだが説得力のないものだった。
- 規制されていない証券の販売によって数百億ドルを調達した。
- 従業員を雇ってブロックチェーン基盤のプロジェクトを構築したが、実現に失敗した。マーケティングをたっぷりやってもできなかった。
- 2018年の弱気相場に徹底的にやっつけられた。
- 静かにこの業界から退出している。みんなに気づかれないように。
スターシップキャピタルのマネージングパートナーであるジョン・メイヤー氏は、コインテレグラフに対して、アルトコインを取り巻く環境に変化が見られることを指摘した。
「ほとんどのアルトコインは、実社会での利用ケースや明白な価値をほとんど提供していない。これらのアルトコインはすぐに蒸発すると考えた方がよい。しかし、実社会での有用性をブロックチェーンで提供し、世界の重要産業で確かな価値を提供する仮想通貨の中には、利用者主導で勢いが出始めている」
仮想通貨強気派のジョン・マカフィー氏は、アルトコイン市場は死んでおらず、現在の価格の下落は、再びやってくるアルトコインブームの利益を得るための機会をやり手の投資家に提供している。とりわけマカフィー氏が推しているのは、プライバシーコインと医療系のコインだ。
一方、マカフィー氏は、アルトコイン悲観論者のベテラントレーダー、ピーター・ブラント氏に反論した。
「ピーター・ブラントは、アルトコインが終わったと言っている。彼の知識は石器時代だ。ビットコインは永遠に価値保存手段になるが、取引においては双方が双方のウォレットの中身を見ることが可能だ。もし銀行が見たら、あなたは叫ぶだろう。プライバシーコインはこの欠点がない。1つの例だ」
ファンドストラットのトム・リー氏もマカフィー氏に同意している。ビットコインが過去最高値に到達したら、アルトコインの季節がやってくると幾度となく発言してきた。リー氏の根拠は、歴史的な前例だ。仮想通貨業界では2017年の強気相場の時からマーケットが進化したというコンセンサスが形成されつつあるのだが…。
分散型アプリ(dApps)開発などに力を入れるクレディッツのイゴール・チョウグノフCEOは、アルトコインの季節は戻るとみている。コインテレグラフの取材に対して、次のように述べた。
「バブルは破裂しなかった。膨らみ始めたばかりだと言った方がいいだろう。仮想通貨エコシステムの基盤を成す要素ができつつある。仮想通貨が一攫千金の手段と考えられてきたICOの時代は過ぎ去った。(中略)アルトコインの季節は、全てのアルトコインに訪れるわけではない。この業界に確かな価値を提供できるコインだけだろう」
翻訳・編集 コインテレグラフ日本版