仮想通貨が映画業界にも進出しはじめているようだ。

 アカデミー賞を受賞した「バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)」や「ハクソー・リッジ」などのプロデューサーとして知られるクリストファー・ウッドロー氏が来年、ICOを通して「ムービーコイン」の発行を計画している。調達目標額は1億ドル(約112億円)で、映画製作に使用。ICOは米SEC(証券取引委員会)のガイドラインに沿っておこなわれる。

 また、ICOで発行されたコインは流通市場で取引され、映画の成功度によってその評価額を算出。一般人による初期段階プロジェクトへの投資を可能にしたICOと同様、ムービーコインは映画製作を民主化できるという。

ブルームバーグによる電話取材に対し、ウッドロー氏は

映画界の製作資金調達法に革命を起こしたい。現在、トップ映画俳優や監督、熟練プロデューサーを巻き込んで計画段階であり、ムービーコインの土台を築きたい

と語った。

ブロックチェーンがショービジネスに

 仮想通貨とショービズ界の融合はこれが初めてではない。ブロックチェーンを活用して仲介人を省くことで、アーティストたちは正当な収入を得られるようになるのでは、と長い間言われてきた。

 デジタル音楽産業向けの仮想通貨「オーディオコイン」は時価総額で280万ドル(約3億1360万円)の市場である。アイスランドのミュージシャン、ビョークの最新アルバム「ユートピア」は仮想通貨(ビットコイン、ライトコイン、ダッシュ、オーディオコイン)で購入することが可能となり、パリス・ヒルトンなど多くのセレブもICOを支持している。

 華やかなエンターテイメント業界は新たな時代の仮想通貨ビジネスにふさわしいようだ。

クラウドファンディングとどう違う?

 ブロックチェーンやICOは多くの産業にとって衝撃的であり、ウッドロー氏も同様の影響をハリウッドに与えたいと考えている。しかし、これまでもクラウドファンディングによって映画が製作されてきている。では、ICOはクラウドファンディングとどう違うのだろうか。

 仮に、ウッドロー氏がムービーコインと引き換えにビットコインやイーサリアムを受け取った場合、制限の多いクラウドファンディングとは違い世界中の投資家から資金調達することができる。また発行されたコインは取引可能で、投資に流動性を保証する。

 ムービーコインが映画業界をどう変えるのか。引き続き注目したい。