世界最大級の仮想通貨取引所バイナンスが、2025年5月の米国および欧州連合(EU)による対シリア制裁の緩和を受け、同国で正式にサービスを開始した。
バイナンスは6月13日、シリア居住者が同社プラットフォームにアクセスし、ビットコイン(BTC)などの仮想通貨を取引できるようになったと発表した。
今回のサービス提供開始は、米国のルビオ国務長官が5月23日に発表した対シリア制裁解除決定を受けたもので、その直後にEUもすべての経済制裁を解除した。
バイナンスの声明によると、「制裁に準拠するため、これまでバイナンスを含む多くのプラットフォームはシリア国内のユーザーにはサービスを提供していなかったが、今回の制裁緩和により、同国は利用規約上の『禁止国』から除外された」という。
スポット・P2P・先物取引に対応
今回のシリア展開は「フルアクセス型」とされており、ビットコイン、XRP(XRP)、ドージコイン(DOGE)、シバイヌ(SHIB)、トンコイン(TON)、ビットコインキャッシュ(BCH)など少なくとも300種類のトークンが取引可能となる。
ただし、スポット取引、P2P取引、先物取引、運用プログラムを含むすべてのサービスは、バイナンスの本人確認(KYC)を完了したユーザーのみが利用できる。中東・北アフリカ(MENA)地域の公式アカウントがX上で発表した。
さらに、シリア国内のユーザーはバイナンスペイを利用した国際送金が可能となるほか、アラビア語による教育コンテンツにもアクセスできるという。
内戦と経済不安が仮想通貨需要を後押し
今回の展開は、2024年12月のアサド元大統領の失脚以降も続く国内紛争の中で発表された。長引く内戦と経済危機、インフレ、そして金融インフラの脆弱さが、仮想通貨に対する関心を一層高めているとみられる。
トレーディングビューが2021年に行った調査では、シリアはリビアやパレスチナなどと並び、仮想通貨関連の検索数が世界トップ10に入る国とされていた。
国際通貨基金(IMF)によると、シリアの人口は2010年時点で2140万人、1人当たりGDPは2810ドルと推計されていた。また、2016年時点では、最大1300万人ものシリア系住民が国外に居住しているとされている。