仮想通貨取引所バイナンスを巡る最近の出来事は、米政府当局による仮想通貨企業への取り締まりについての大きな議論を呼んでいる。
バイナンスとその創業者で元CEOのチャンポン・ジャオ氏(通称CZ)は、米国のマネーロンダリング対策に関する法律の違反を認め、43億ドルの罰金を支払うことに同意した。日本時間で11月21日のことだ。
2017年の創業から仮想通貨取引所業界の雄として活躍してきたバイナンス。毀誉褒貶あるが、功績を認める声もあがっている。
マネロン幇助は従来の金融機関も関与しているケースが多々有り、それを差し引くとバイナンスは新たなユーザーを金融の世界に引き込んだという点では称賛できる、という観点だ。
米コロンビア大学ビジネススクールの非常勤教授であり作家のオミッド・マレカン氏は「仮想通貨は悪人が悪事を行うための手段だと思っている人が多いかもしれないが、実際は従来の金融システムでもマネロン幇助は起こっている。反マネーロンダリングに関するコンプライアンスに気をつけている金融機関でも、巨額の不正資金を処理しているケースがあるからだ。
例えば国際調査報道ジャーナリスト連合(ICIJ)が入手したリーク文書によると、世界最大級の銀行でさえ犯罪者による数兆ドルの資金洗浄を許していたことが明らかになっている。ドイツ銀行、HSBCなども一例として挙げられている。
「だがこうした金融機関では専門の担当者がしっかり法令遵守の手続きや書類提出をおこなっており、それだけで万事OKということになっているのだ。」
またマレカン教授は「バイナンスの基準に照らして処理されていたら、ウォール街にある金融機関で働く多くの管理職が刑務所に入らなくてはならないだろう。だがこうしたバンカーたちは決してゲームのルールを無視するほど愚かではない。」
マレカン教授はバイナンスが世界中で金融包摂に貢献したことも称賛した。
「貧しい人々や恵まれない人々数千万人を金融システムに参加させるという、まずまずの仕事をした。これはコンプライアンスを遵守している金融機関が長年にわたって失敗してきたことだ。」
仮想通貨取引所にとって今後はコンプライアンス遵守の世界で、新たな戦いがはじまるのかもしれない。
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