バイナンスが主導する「産業回復イニシアチブ(IRI)」はFTX崩壊後の仮想通貨業界を支援するための共同投資プロジェクトだが、新たな報道によれば、その効果は必ずしも期待通りではなかったかもしれない。
ブルームバーグの報道によれば、IRIを2022年11月に発表したバイナンスは、ステーブルコインのバイナンスUSD(BUSD)で総額10億ドルのコミットメントのうち1500万ドルを投入した。
その後、バイナンスは残りの9億8500万ドルをバイナンスに戻し、投資に使う計画だった。しかし、ステーブルコインに対する規制の懸念が高まる中、バイナンスは2023年3月に、これらの資金をBUSDからビットコイン(BTC)などの仮想通貨に交換した。
バイナンス以外にも、IRIは2023年2月末までにアニモカ・ブランズ、アプトス・ラボ、ジャンプ・クリプト、ポリゴン・ベンチャーズなど18の組織から追加で1億ドルの寄付を集めた。
IRIの発表から3ヶ月後、バイナンスは14のプロジェクトに資金を提供したと主張したが、資金を受け取った企業の名前は公表していない。バイナンスの10億ドルのIRIコミットメントから公に発表された唯一の支出は、今年2月初めに発表された韓国の仮想通貨取引所Gopaxの買収だった。
ブルームバーグが収集したウォレットデータによれば、IRIは設立以来、その投資額は3000万ドルにも満たない。9つのIRI参加者のうち、DWFラボとバイナンスが支援するアプトスだけが、コミットメントした資金の一部を少なくとも使っている。
IRIが現在も仮想通貨プロジェクトを支援し続けているかどうかは不明だ。その応募フォームはGoogle Docs上で依然として有効となっている。コインテレグラフはバイナンスにコメントを求めたが、まだ回答は得られていない。

IRIのコミットメントの状況が明らかになったが、仮想通貨業界全体でも資金調達面では苦戦を強いられている。
ブロックチェーン分析会社メサーリによると、仮想通貨関連のベンチャー資金調達は、2023年の第3四半期額は前年同期比で70%も減少した。報告によれば、2023年第3四半期の仮想通貨VCの取引額は約20億ドルで、2021年第1四半期の史上最高の170億ドルから大幅に下落した。
翻訳・編集 コインテレグラフジャパン