英国のオークション大手クリスティーズが、世界的なアート市場の低迷を受け、非代替性トークン(NFT)を扱う部門を閉鎖し、より広い部門に統合する方針であると報じられている。
ナウ・メディアの報道によれば、258年の歴史を持つ同社は、今後もNFTを含むデジタルアートを販売するが、これまでの独立したNFT部門ではなく、「20世紀・21世紀美術部門」の一部として取り扱うことになるという。
同時に、クリスティーズはデジタルアート担当副社長を含む2名の社員を解雇したと伝えられている。ただし少なくとも1人のデジタルアート専門家は残す予定だという。
クリスティーズはNFT市場で大きな存在感を示してきた。「Beeple」ことマイク・ウィンケルマン氏の『Everydays: The First 5000 Days』を含む複数の作品を販売している。Beepleの作品は2021年3月に6930万ドルで落札された。
また同社はWeb3領域を支援してきた。2022年9月にはNFTオークションプラットフォームを立ち上げ、さらに7月には仮想通貨のみで取引する不動産チームを設立していた。
市場低迷が転換を促した可能性
デジタルアートアドバイザーでキュレーター兼コレクターのファニー・ラクーベイ氏は、月曜のX投稿で、今回の決定は「現在のアート市場の縮小」に関係している可能性があると指摘する。
バーゼル美術展とUBSが4月に発表した「アート・マーケット・レポート 2025」によれば、世界のアート市場は2024年に12%減少し570億ドルとなった。オークションハウスの売上高も20%減の230億ドルに落ち込んでいる。
ラクーベイ氏は「部門が他より収益を上げられないなら、オークションハウスは独立部門を維持できない」と述べた。
さらに「明らかに良いシグナルではないが、オークションハウスはすでに有名なアーティストやブランドの二次流通にしか注力していない」とも付け加えた。
「コダック・モーメント」か
一方、NFTコレクターで分散型自律組織Doomedのメンバーでもあるベンジ氏は、クリスティーズの部門閉鎖はデジタルアート需要の弱さや「機関投資家がJPEGから撤退している」ことを意味するわけではないと主張する。
ベンジ氏は、この判断は「欠陥があり持続不可能」なビジネスモデルに原因があると推測しており、新たな方向性はクリスティーズにとって「コダック・モーメント」になるかもしれないと述べた。
「GONDIのようなオンライン競合が手数料ゼロで提供しているのに、認証・保管・保険・配送が不要なものに25~30%の手数料を課すのは不可能だ」と同氏は指摘した。
さらに「優秀な人材が職を失うのは残念だが、クリスティーズが市場から撤退するのは全体としてプラスだ。価値を吸い上げる存在が減れば、コレクターやアーティストにより多くの価値が還元される」と付け加えた。
NFT市場は揺れ動く
NFT市場は過去数年、不安定な状況が続いてきた。昨年は2020年以来で最も取引高・売上高が低迷した年となった。
しかし2025年には復調の兆しが見られた。8月には時価総額が93億ドルを超え、7月から40%増加した。背景にはイーサリアムベースのコレクションやイーサリアム(ETH)の価格上昇があった。
直近数週間は冷え込みを見せているものの、NFT市場の現在の時価総額は過去24時間で2%上昇し、59億7000万ドルに達している。
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